――農業の大規模化のメリットはなんですか。

大規模化をおこなうと、農家一定の面積あたりの作業労働時間が減少したり、生産するときの費用が下がったりします。たとえば、田植機が1回に8本ずつ植えていくのは、4本ずつ植えていくのより、同じ面積の田植えをするときに、2分の1の時間でできます。しかし、8本植えの機械は、4本植えの機械よりたいへん値段が高いので、小さな面積だとかえって費用が高くなります。

そこで、大規模化をおこなうと、効率的に機械が使え、費用が割安になります。農林水産省では、45年前から農家の大規模化と農地の整備を進め、費用削減と農家の所得確保をめざしていろいろな方法をとってきましたが、なかなか農家の大規模化は進みませんでした。

農家の規模拡大は、いろいろな問題があってなかなかむずかしいのですが、農林水産省では、いろんな法律を作ったり、昔作った法律を直したりしています。
〔農林水産省ウェブサイト「消費者の部屋」(国立国会図書館 2016年7月6日保存)〕

大規模化すればコストが削減され、効率化が進むというのである。

大規模農業はコスト削減を実現しない

では、実際に農業の大規模化はどの程度進んでいるのであろうか。

図表1は、地域ブロック別に大規模農家の構成比を示したものである。農林水産省が、農業の実態を5年に1回調査している「農林業センサス」のデータによれば、2010年と15年とを比較して、北海道、東北、北陸において5ヘクタール(5万平方メートル)以上を耕作する経営体は、構成比で約2~3%ポイント増加している。

5ヘクタール以上の大規模農家の比率
出所=『地域衰退

規模の拡大とともに、法人形態による農業経営が多くなっている。図表2は、農業経営体数と組織経営体(家族経営体以外のものを指す)のうち法人経営体数、さらにその割合を示したものである。この図表からわかるように、規模が大きくなればなるほど法人形態をとる農業経営体は増加している。

5ヘクタール以上の大規模農家に占める組織経営体のうち法人経営体の割合
出所=『地域衰退

これらのデータから、農業の大規模化は少しずつ進んでおり、それは個人農家の拡大だけでなく、法人形態の経営体の拡大によって生じていることがわかる。

農業の規模が拡大していく中で、肝心のコストは削減されているのかが政策の効果を考える上で重要なポイントになってくる。すでに述べたように、農林水産省は農業の規模を拡大することによってコストを削減することが可能であると説明していたが、実際はどうなのだろうか。

これに関しては、実は規模が大きくなればなるほどコストが削減されるわけではないことが、すでにいくつかの研究で明らかにされている。

たとえば、秋山(2014)は、コメの生産において、個別経営の場合には7ヘクタール程度で、組織経営の場合には15ヘクタールで、10アール(0.1ヘクタール)当たり生産費の費用曲線は水平になり、規模の経済の効果が頭打ちになることを示している。