頭を使え、知恵をしぼれ

あなたにもきっと、好きなこと、やりたいこと、叶えたい夢があるはずだ。それなのに、それができないと嘆いている人もいると思う。

ただ、考えてみて欲しい。できない理由を「上司の理解がないから」とか「経済的に許されないから」などと、周囲や環境のせいにしていないだろうか。あるいは「どうせおれには無理だ」とチャレンジする前からあきらめていないだろうか。

そんな人に私はいいたい。

「ほんとうに自分がやりたいことであるならば、実現に少しでも近づくよう頭を使い、知恵をふりしぼれ。現状を嘆く前に、なにをすればいいのか、徹底的に考えろ」

「窮して変じ、変じて通ず」

「窮して変じ、変じて通ず」という言葉がある。

川上哲治さんが、師と仰いだ正眼寺の梶浦かじうら逸外いつがい師にいただいたもので、「真剣にやっていれば、必ず行き詰まる。それでも一心になってやっていると、ひょいと通じるものだ。通じないのは、行き詰まる段階までいく真剣さが足りない」という意味である。

私もそう思う。人間というものは、好きなことなら、夢があるなら、いくらでもがんばることができる。そして、あきらめずにがんばり続ければ、必ず願いは叶う。叶わないのは、思考の量と努力が足りないからなのだ。

これは、私の生涯を通じてたどり着いた真理である。

人の縁が生んだ「江夏の21球」

「結縁・尊縁・随縁」という言葉がある。中曽根康弘元総理大臣があいさつの際によく口にされていたが、「縁を結び、縁を尊び、縁に従う」という意味である。私も選手たちによくいった。

手前味噌を承知でいえば、私と出会ったことで、人生がずいぶんと変わった選手は少なくないはずだ。たとえば江夏豊。阪神から南海に移籍してきた彼に、私はリリーフ転向を勧めた。彼は最初いやがったが、「野球界に革命を起こせ」という私の一言で転向を決意。その後移籍した広島で、ストッパーとして日本一に大きく貢献した。

私と出会わなければ、「江夏の21球」という伝説は生まれなかったといっても過言ではないだろう。