「折り込みチラシで集客」→「LINE登録を促す」
あえて「ネットショップ」という形式を取らず、LINE公式アカウントを活用して商品を販売する事例もある。横浜市でラーメンや蕎麦などの麺類を製造する「丸紀」は、主にスーパーに商品を卸している麺メーカー。売り方は非常にシンプルだ。
月に1回、麺工場の敷地内で行うラーメンや蕎麦、うどん等の麺の直売会を、新聞折り込みチラシで告知。集まった人に対して、「LINEで友だち追加してくれたお客様に、やきそばの麺をプレゼント」と、特典を打ち出してLINEに登録してもらうように促す。わざわざ工場まで足を運んでいるだけあって、顧客は親近感を持ってすぐに友だち登録してくれる。新聞折り込みチラシをまいているエリアが近隣のため、「こんなところに麺の工場があったのか」という地元びいきで、あっという間にファン客が増えていった。
追加で友だち登録してくれた顧客に対して、川口尚紀専務は月に1回、直売会のお知らせを、LINEを通じて配信している。販促手法としてはネットショップのメルマガやSNSと同じ要領だ。新聞折り込みチラシを見なかった顧客にも確実に直売会の情報を届けることができるようになった。定期的に丸紀の情報を届けることで、“麺を買うなら丸紀”という意識を刷り込むことができる。
小売未経験の麺メーカーが、蕎麦500食を売り上げた
「年末の直売会では、年越し蕎麦が約300食、鴨南蛮蕎麦は約200食売れました。小売をやったことがない私たちのようなメーカーにとって、1日でこれだけの数の蕎麦が売れるのは驚きです」
高いお金を払ってネットショップを制作し、広告費をかけて、送料まで負担して安売りするネットショップの売り方よりも、LINE一本で直接、お客様にお店に買いに来てもらえるほうが、確実に利益が取れる。コミュニケーションが直接取れるので、ネット通販のように顧客が離れていくことも少ない。
Eコマース市場で不要な競争に巻き込まれることもなく、自分たちのこだわりの麺を、大切なお客様だけに販売している丸紀は、コロナ禍における、皆が幸せになれる売り方と言ってもいいだろう。ネットを通じてモノを売る方法は、「ネットショップ」という形式にこだわらなくても無限大にあるのだ。