コロナ禍でネットショップの売り上げが好調だ。それと同時に、競争も激しくなっている。ネット活用で成功する中小企業はどこが違うのか。経営コンサルタントの竹内謙礼氏が3つの事例を紹介する――。
メロンとマスカットが配置された銀座千疋屋公式サイトのヘッダー
画像=銀座千疋屋公式サイト
銀座千疋屋のネットショップはリニューアルを行った

大手企業のネット進出が顕著になっている

コロナ禍の影響で、多くのビジネスが打撃を受けている。その厳しい中でも売り上げが好調なのがネットショップ運営である。富士経済によると、2021年のEコマース市場は2019年比で15%増の11兆4190億円まで成長すると予測。楽天市場も昨年のコロナ禍の4~6月のショッピングEコマース総流通額は、前年比48.1%と急伸した。

ステイホームで巣ごもりする消費者が増えたことに加え、2021年1月から一部の都市で始まった二度目の緊急事態宣言によって、ネットショップの売り上げは好調を維持している。

しかし、全てのネットショップが、コロナ禍の恩恵を受けているわけではない。もうかるビジネスには必ず商売人が集まり、競争が激しくなるのが常である。特にコロナ禍になってからは大手企業のネット通販事業への進出が顕著といえる。

衣料品販売のしまむらは、2020年10月に直営のネットショップをオープン。10億円を投資して自前の物流拠点を設け、将来的にはEコマース事業を全体の売り上げの5%まで成長させる計画を打ち出している。

ワコールも自社のEコマース事業の売上高を2025年3月期までに50億円から200億円に伸ばすことを目標として掲げ、大手百貨店なども、消滅したインバウンドの売り上げを取り返すべく、今年度からネット通販に力を入れていくところが増えている。

ネット通販で「利益が出た」は全体の35%

今後、競争が激化するEコマース業界において、商品力や価格競争力のない中小規模のネットショップの運営は、ますます厳しくなることが予想される。年々運営方法も複雑化しており、ネット通販の知識と経験がない企業で利益を出すことが難しくなってきているのが実情である。

日経MJが行った2019年度の小売業上位500社の調査によると、ネット通販で「利益が出た」と回答した企業は全体の35%しかなかった。

「以前よりも検索で上位表示させることが難しくなり、広告費も高騰していく一方です。商品の価格競争も激しく、コロナ禍になってからのほうが、ネットショップ運営が大変になった印象です」(インテリアを販売するネットショップの経営者)

厳しい現状に危機感を募らせる人は少なくない。

ホームページ制作会社にネットショップを作ってもらい、楽天市場やアマゾンで商品を売ったり、ネット広告で集客したりする従来の販売方法が通用しなくなりつつある。ネットの新しい集客方法を独自で模索し、「ネットショップ」という概念にとらわれないオリジナルの売り方を実践しなければ、今後のEコマース業界で生き残ることは難しい。

ここで、コロナ禍で好調な売り上げを維持している「ネットの新しい売り方」を実践している企業を3つ紹介したい。