ビタミンD代謝物を投与しなかった群に比べて、投与した群では重症化リスクが90%以上減ったということになります。にわかには信じられないくらいの著しい効果です。患者数が少なく、解析方法の不備も指摘されていましたが、詳細な検証の結果、ビタミンDの効果は明らかとなっています(4)

世界中の200人以上の科学者が服用を推奨

ここまで述べてきたように、血中のビタミンD不足は、ほぼ確実にCOVID-19の感染、重症化、死亡を促進することが示されています。このことから昨年12月に、世界中の科学者・医師ら200人以上が、すべての政府、公衆衛生当局、医師、医療関係者に対して、ビタミンDの摂取量をすぐに増やすよう求める公開提案書を出しました(5)

提案書の中では、具体的に以下のような推奨項目を挙げています。

・25-ヒドロキシビタミンD〔以下、25(OH)D〕の血清レベルが30ng/mL(75nmol/L)以上になるよう、すべての供給源からの摂取を推奨する。
・成人には、1日4,000IU(100μg)、あるいは少なくとも2,000IUのビタミンD摂取を推奨する。
・過度の体重、肌の色の濃い人、介護施設で生活している人などビタミンD欠乏のリスクが高い成人は、より高い摂取量(例えば、2倍)を推奨する。
・まだ上記の量を摂取していない大人は、2~3週間(または検査で測定する場合は30ng/mLを達成するまで)毎日10,000IU(250μg)を摂取してから、上記の毎日の量を摂取することを推奨する。
・すべての入院したCOVID-19患者については、25(OH)Dレベルを測定して、少なくとも30ng/mL(75nmol/L)以上になるように、カルシフェジオールまたはビタミンD3を投与する。

提案書では、「ビタミンDの不足は、新型コロナに大きな影響を及ぼすリスクの中で、最も容易に、かつ迅速に修正可能なリスク因子である。またビタミンDは安価である。」としたうえで、最後に「すぐに行動してください」と結ばれています。

ビタミンD不足の日本人

ビタミンDは人間が生きていくためには必須の栄養素です。そのため太陽光を利用して体内で合成できるように進化してきたと考えられます。例えば赤道に近いアフリカで誕生した人類は、高緯度に移住する過程で、太陽光を効率的に取り込めるように、肌のメラニン色素が減っていったといわれています。

ビタミンDを合成する能力は遺伝性が強く、その能力は人によって異なります。日本人は比較的ビタミンDの合成力が低く、欠乏症になりやすい人が多いことがわかっています。自分がビタミンD不足になりやすい体質かどうかは、DNA検査で調べることができます(筆者プロフィールにリンクがある「新型コロナ感染・重症化リスク検査」では、ビタミンD不足のリスクについても調べることができます)。