「居場所」は人間の脳を成長させる

一方で、自分が役に立つ場所というのも居場所になります。お手伝いができるとか、自分が必要とされている場所です。人間の脳には他人のために行動しようと考える思考の回路があるので、誰かのために何かしたいと本能的に思うのです。

子どものころに居場所があるかどうかで脳の発達が変わることが、科学的な研究で証明されています。

居場所をつくることは、とても創造的な行為です。子どもにとって居場所を得るということは、長い生涯全体にわたってかけがえなのない財産になり、また成長のいしずえになってくれるのです。

居場所をつくることは子どもだけでなく、大人を含めた社会全体にとっても大切な課題になります。

たとえば現代では、インターネット上のさまざまなプラットフォームや、ソーシャルメディアは、多くの人にとっての「居場所」になっています。テクストや動画をシェアし、おたがいにやりとりすることで自分を表現し、さまざまな「他者」に出会うことができる。そのような行き交いを通して、少しずつそれぞれの個性を活かすことができますし、さまざまな創造も生まれます。

現代において、社会や経済が発展するための基礎は、巧みな居場所づくりにこそあるといえるでしょう。その際、さまざまな個性を包摂するような仕組みが必要です。子どもの学びから大人の活動まで、「居場所づくり」は鍵となります。

居場所こそが、人間の脳を成長させるのです。

自分の個性を伸ばせる学校づくりを

人工知能が発達して、世の中が大きく変わっていくと、大人も自分たちが学校で学んだスキルだけでやっていけるわけではありません。日本の教育の未来は、ホームスクーリングを含む「もうひとつの学び方」の方にあるといってよいと思います。

これからの学校に居場所として期待することがあるとすれば、もっと個性と創造性を伸ばせる学びの場になってほしいということです。そして子どもたちだけではなく、大人たちも通える学校ができていくといいですね。

どんな人も年齢に関係なく、自分の個性を伸ばし、創造性を発揮できる学校ができて、学びたい時に学べる社会ができたらいいなと思います。

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