興味関心の「同期」こそがブランドを生み出す

自分の興味・関心と、お客の興味・関心が「同期」し、それが売り上げとなって表れていくような感覚でした。

その「同期」の感覚こそ、特にローカル企業のブランド・コミュニケーションで大事なことだと思います。ブランドというのは共に作っていくことにほかならないからです。特に、原発事故直後は、食の信頼が揺らいでいた時期でしたし、被災地のメーカーを応援したいという機運もありました。

とはいえ、一方的に高所から伝えていたのでは信頼を得られなかったかもしれません。ユーザーと同じ目線で語ったことがよかったのだと思います。ぼくがかまぼこの魅力を学ぶプロセスは、同時に、新たな顧客がかまぼこの魅力を学ぶプロセスでもあったわけです。

自分が感じた魅力がそのまま商品の魅力につながる

ぼくの暮らしも変わりました。食卓には自然とかまぼこが増えました。もともと練り物が好きだったということもあるのですが「社員割引」があったんです。高級なかまぼこを食べるときには、自宅に友人も招いて飲み会をやります。

かまぼこに合う地酒を買おう、酒屋のマスターや女将に酒のことを教えてもらおう。せっかくならおしゃれな酒器に入れよう、その酒器を手に入れるために陶器市に行こう。そうして次々に新たな出会いが生まれ、その様をSNSやブログで発信しちゃうんです。

小松理虔『地方を生きる』 (ちくまプリマー新書)
小松理虔『地方を生きる』(ちくまプリマー新書)

ぼくは、誰よりも暮らしのなかでかまぼこを楽しんでいる自信がありました。だから、その模様を「ダダ漏れ」させていけば、さらなる「同期」が生まれると考えていました。

大事なことは、かまぼこメーカーの広報という「公」の立場と、ぼく個人の「私」の立場を「混同」させることです。まずは自分の暮らしを面白くしようとする。そこに会社の商品や取り組みを重ねて、それを発信していく。

すると、その公私混同がポジティブに回り始め、自分の楽しさと、情報の受け手の感じる楽しさが同期していきます。その手応えが感じられるのが、地域ならではの働き方。地域で働くときは、ぜひ食に関わる仕事を探してみてください。あなたの食卓が、地域とダイレクトにつながるはずです。

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