フットワークが重くなるのは長年の筋肉減少の積み重ね

これまで約20年間で8700人以上に運動指導を行ってきた信州大学医学部特任教授の能勢博氏によると、「年を取って疲れやすくなったり、フットワークが重くなるのは長年の筋肉減少の積み重ね」だという。

たとえると、筋肉は車のエンジンの大きさで、脂肪は車に載せる荷物。筋肉は30歳を過ぎると年に1%ずつ減少していくが、脂肪は減っていかない。そのため運動習慣がない人は、筋肉が減るにつれて本来筋肉があった部分に脂肪が入り込む。見た目の体形は変わらなくても、体の内部では筋肉量が大幅に減少しているのだ。車でいうと、載せる荷物は増え続けるのに、エンジンは小さくなっていく状態といえる。

「顔にシワやたるみが出てくるのも、顔の筋肉が衰え、筋肉の上にのっている脂肪や皮膚を支えきれなくなることが一因。日常では最大体力の20~30%しか使わなくても生きていけるので、気づいたときには脂肪だらけで筋肉が少ない体になっています」(能勢氏)

ゴルフでも買い物に行くときでも、ブラブラ歩くのではダメ

30代以上で運動習慣が全くない人にお勧めなのは「インターバルウオーキング」だ。

「“ややキツイと感じるペースでの速歩き”と“ゆっくり歩き”を3分間ずつ交互に繰り返すのです。ややキツイというのは3分間歩いて息がはずむ程度。速歩きのときは大股で、ゆっくり歩きのときはいつもの歩幅で歩きましょう。ややキツイ速歩きのときは体を大きく動かすため、筋肉を構成する筋線維がわずかにダメージを受けます。それを修復する際、筋肉がより強く太くなるのです」(同)

能勢氏が、70歳の集団に1日30分のインターバルウオーキングを週4回、半年間実施したところ、実施前と比べて平均して20%体力が上昇するという結果だった。

「同様の運動を継続していると、80歳まで体力が落ちませんでした。一方で何も運動をしない群は70歳から80歳までの10年間で20%も体力が低下していたんです。運動をしている群とそうでない群で比較すると、その差は40%にもなります」(同)

インターバルウオーキングを5カ月間続けると、筋肉量が増え、それに伴って体力が向上して体が若返るという。夜にぐっすり眠れる、肌にハリが出る、脳の活性が上がって鬱々とする日々が減るなどの効果もある。

「ゴルフでも買い物に行くときでも、ブラブラ歩くのではなく『ゆっくり』と『ややキツイ』を交互に数分ずつ繰り返すんです。それだけで半年経つ頃には筋肉量が増えて持久力も向上します。もちろん、もっと体を鍛えたいときには、下半身を鍛えるスクワットや、上半身に効く腕立て伏せのような筋トレを取り入れてもいいでしょう」(同)