地方在住、子育て中、女性をテーマにしたサービス……。以前であれば、起業にはハンデとなりそうな条件を複数抱えながら、高本玲代さんは更年期夫婦向けのコミュニケーションサービス「wakarimi(ワカリミ)」をたった数カ月で立ち上げた。実現できたのはなぜだろうか。高本さんの背中を後押ししたものとは――。
5年前なら早すぎ、5年後なら遅すぎた
現在45歳の高本さんが、更年期世代の夫婦向けコミュニケーション支援サービス「wakarimi」を立ち上げたのは2020年7月だ。wakarimiは、LINEを活用して夫婦の間に入り、その日の女性の体調や、更年期に関する情報を共有するなどし、コミュニケーションを促す。
更年期による体調不良や、夫婦間のコミュニケーションで悩んだ自身の経験をもとにビジネス化のアイデアを得て、わずか半年で本格稼働にこぎつけた。高本さんは、「5年前の環境なら実現できなかったと思います。それに、5年後なら、おそらく更年期に着目した競合フェムテック(女性の健康をテーマとしたサービス)は増えていたはずなので遅すぎたでしょう。ちょうどいいタイミングだったと思います」と話す。
「スタートアップの世界はまだまだ男性中心で、起業家に占める女性の割合は5%程度だそうです。(ベンチャー企業に出資する)ベンチャーキャピタルの担当者も、銀行の担当者も圧倒的に男性ばかり。そんな中で、『更年期』という女性特有の課題に取り組むビジネスは、以前であれば理解されにくかったでしょうね」
高本さんは、起業をゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)になぞらえてこう説明する。
「夢を実現するために必要な情報や武器を探し求める、冒険の旅に参加したいのに、女性はそもそもゲームに参加するための“入口”がどこにあるのかわからず、周りをぐるぐる回って探しているような状態でした。それが、ビジネスにおけるダイバーシティの重要性の高まりや“MeToo”運動などにより、ここ数年で風向きが変わった。『ここに入口がありますから、参加したい人はどうぞ』と言ってくれる人が増えてきました」