コロナ収束後のイベント業界に残る大きな傷跡
ではそのことがこれからのイベント業界にどのような影響を与えるのでしょうか。たとえコロナが克服され収束したアフターコロナ時代がやって来たとしても、数年後のイベント業界には3つの大きなコロナの傷跡が残りそうです。
まず見過ごせないのがイベントの鍵となるスタッフや会社の廃業です。これは俳優や芸人といった演者たちの引退だけの問題ではありません。演出や構成作家、デザインや音響などひとつのイベントが成立するにはたくさんの専門スタッフの関わりが必要です。
毎年、何やかんやで仕事が定期的にはいってくるから成立していたこのようなスタッフの日常がコロナで大きく変わりました。その状態がおそらく2020年、21年と2年続くことになる。たとえ来年になって同じイベントを再起動させようということになったとしても、どこかの機能においてそこに存在していた熟練スタッフが戻ってこられないというケースがたくさん起きるはずです。
個人レベルだけでなく、この2年で廃業する小屋も出ますし、私が関わっている講演会の業界でも仲立ちをしていただけるエージェント会社が2年後にはなくなっているかもしれないというリスクも存在しています。
もちろんそこに新しい才能が入って違う形でイベント業界はまた盛り上がっていくでしょうけれども、イベント業界の変動費は「才能」と「経験」が変動費化されているものなのです。ですから一度、失ってしまったらもうそれは戻ってはこないケースがたくさんある。これが未来のイベント業界が直面する最初のリスクです。
「盛り上がりかけていたイベント」がリセットされた
2つめに盛り上がりかけたものがスタート地点に戻るリスクです。スポーツイベントでいえばプロ野球、Jリーグ、プロゴルフ、プロテニスなどメジャースポーツの次に来るさまざまなスポーツイベントが過去十年でいろいろな形で盛り上がりを見せ始めていました。
具体的な名前は挙げませんが、それらの団体は2020年のオリンピックを機会にさらなるメジャー化を狙ってきたはずです。メジャースポーツでもプロ野球に対する独立リーグや、Jリーグの中でのJ3など地元に根づいて飛躍を遂げようとしているスポーツチームもあります。
こういった動きがいったん止まってしまう。残酷ではありますが、これまで一旦盛り上がりかけたところから集客という観点でいえばスタート地点に戻ってしまった団体がたくさん出てきました。そこからどのようなモチベーションとどのようなやり方で再起動すべきか、大変な努力が必要な状況だと思います。