エボラ出血熱との症状の類似から「鳥エボラ」とも呼ばれる
強毒の鳥インフルエンザウイルスに感染したニワトリは全身でウイルスが増える。とくに体温の高い腸管でよく増殖するため、フンにウイルスが多く含まれている。
ニワトリは内臓など至る所から出血して眠るように死んでいく。死んだニワトリのトサカや脚は内出血で黒く変色してしまう。ニワトリのこうした症状は歯茎や鼻、内臓から出血する、人のキラー感染症のエボラ出血熱とよく似ているため、「鳥エボラ」と呼ぶウイルス学者もいる。
鳥インフルエンザは日本では2004年に79年ぶりに確認されている。同年1月、強毒の鳥インフルエンザが山口県の養鶏場で突然発生してニワトリが大量死する。2月には大分県の民家でチャボが感染死した。
さらに京都府の養鶏場でもニワトリが大量に死んでいたことが発覚。この京都府のケースでは届け出の遅れが被害を拡大させ、経営者の会長夫婦が非難された揚げ句、自殺に追い込まれた。社長らも家畜伝染病予防法違反罪に問われた。
死亡した3歳の男の子から鳥インフルエンザウイルスが
鳥インフルエンザはかつて人には感染しない養鶏場のニワトリの伝染病だと考えられていた。それが覆ったのは、1979年の香港での出来事がきっかけだった。インフルエンザの症状を起こして死亡した3歳の男の子から鳥インフルエンザウイルスが見つかり、鳥インフルエンザが人に感染することが初めて確認されたのである。
このとき見つかったウイルスが毒性の強い「H5N1」タイプで、香港政府は直ちに香港中のニワトリの殺処分を行い、H5N1の人への感染拡大を食い止め、WHO(世界保健機関)や各国の防疫当局から高く評価された。
厚生労働省によると、このH5N1は中国や東南アジアを中心に感染が広がり、2003年11月以降、世界で861人が感染し、うち455人が亡くなった。中国や香港などでは2013年3月以降、強毒の「H7N9」タイプに1568人が感染して615人が死亡している。鳥インフルエンザは世界各地で猛威をふるい続けているのである。
ちなみに現在、日本で感染が拡大しているH5N8タイプのウイルスが人から人への感染したケースは、まだWHOに報告されていない。