あくどくすればするほど「儲かる」という現実

あくまでこれは一例だが、テクニックをフルに用いれば、不動産屋が手にする仲介手数料はどんどん膨らむ。なお今回の場合、不動産屋Aが仲介手数料として得る額を厳密に計算すれば{(3000万円×6%+12万円)×1.1}+{(5000万円×6%+12万円)×1.1}で、およそ554万円。これは売主と買主の双方代理、つまり両手仲介をした取引を2回行うことで、はじめて創出できる額だ。

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「安く買って高く売る」のは商売の基本だし、決して悪いことではない。しかし仮に、この不動産屋Aが不動産屋Bと結託せず、素直に市場へ出した場合、売主の利益はどうだったか。

売主が市場の論理に任せていれば、4000万円で直接、買主に売ることができたかもしれない。この時点で売主の利益は大きく変わっている。リノベーションも、業者が先にやらないとならない理由はほとんどないだろう。買主が買った後に自分の好みにやればいいし、おそらく業者の利益が乗っていない分だけ安く済むはずだ。

「悪いこと」はしていないが、売主や買主の利益を奪った

しかし今回のケースでは、不動産屋たちは最初から、自分たちの利益を最大化することを重視し、売主や買主の利益を毀損することをいとわなかった。客が不動産屋にコンタクトを取った、最初のその瞬間に、自分たちの利益が最大化することを意図して、取引を進めたのだ。この点で「あくどい」と言える。

仲間内での仲介手数料や転売利益については、「今回はこちらに持ち込まれた物件だから、そちらの取り分を抑えてくれ。次回はそちらを儲けさせるから」など、そのときの状況に応じて案分をすればいい。このようにして「あくどい不動産屋たちが、あくどい方法で儲ける」というサイクルが繰り返されていくのである。