※本稿は、山田寛英『不動産屋にだまされるな』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
倫理観を崩壊させた方が儲かる場合がある
不動産屋はそのビジネス上、倫理観を崩壊させたほうが儲かる場合があることも否めない。その分かりやすい例が、両手仲介を2回繰り返すことのできる「買取再販」の悪用だ。「買取再販」とは不動産屋が物件を買い取り、リフォーム(リノベーション)したのち、適正価格にして改めて市場に出す手法を主に指す。
たとえば、3000万円で中古のマンションを不動産業者が購入し、お風呂やキッチンを新しいものと取り替え、間取りを変更し、壁紙を新しいものにしたうえ、4000万円で販売、といったケースは典型的だ。
もちろん「買取再販」のすべてが悪いわけではない。適正価格で、実直に売買を行う不動産屋もたくさんいる。しかし、儲け至上主義の不動産屋がいた場合、そのあくどさが如実に表れる販売方法でもある。以下にその一例を紹介したい。
物件を安く買い叩き、リフォームして高く売る不動産屋
たとえば「古くなったマイホームを売りたい」と考える売主がいたとしよう。その仲介をすることになった不動産屋Aは、知り合いの不動産屋Bと組み、そのままBへ不動産を売る。この場合、不動産屋Aは売主、そして買主の不動産屋Bの双方を1社で仲介。いわば「両手」仲介を行ったとする。
途中、買主の不動産屋Bは不動産屋Aに対して、「売主になるべく安く売らせろ」と、要望を出す。そこで不動産屋Aは売主に対し、「業者しか買わない物件です。ここで売らないと後はありません」などと言いくるめ、市場に出せば4000万円で売れる可能性がある物件を、不動産屋Bへ3000万円で売ってしまう。そして買い受けた不動産屋Bは、この物件にリフォームやリノベーションを行って、利益を十分に乗せて市場へ戻す。
しかし、市場へ戻すといっても、そのまま不動産情報サイトのレインズなどに載せたりするわけではない。ここでのポイントは、リフォームした後に買主へ売却する際、不動産屋Aが仲介をすべく、再度暗躍することだ。
仲介をしてくれる不動産屋は本来、ほかにいくらでもいる。それにもかかわらず、同じ不動産屋Aが「未公開物件」などの名目で、公開前に先んじて買主と交渉。5000万円での売買契約を成立させてしまう。