誰かが損をすれば、誰かが儲かる「ゼロサム・ゲーム」

株式は、ある人の損失が、そのままほかの人の利益となる「ゼロサム・ゲーム」の要素がある。だからプロトレーダーから見れば、誰かが市場にお金を落とすことが、回りまわって自分の利益につながるから、特に株式投資に長けていない人に興味を持ってもらうことが重要になる。そのため彼らに対し、「簡単に儲かります」「この株がこれからくる」といったアピールを積極的に行い、新規の投資家を勧誘し続けているのだ。

結果、断片的な情報を鵜呑みにした素人が、情報量や経験の差でソンをする場面が多く見られるが、これは証券市場ができてからの歴史上、繰り返されてきたやりとりである。

ではこのような株式市場に対し、情報も経験も持っていない普通の人がどう対峙すべきかといえば、「かかわらない」のが最適解だろう。そもそも株式など買わなければいい。証券会社に行かなくても、またFXなどの金融商品についての知識を得ずとも、日常生活に影響はない。どうしても株式を買わないと生活に支障をきたす、ということは、まずないはずである。

「弱肉強食」の側面が強い不動産売買

他方、不動産市場も同じようにプロとアマが戦う世界である。だがしかし、こちらの市場は株式市場と、決定的ともいえる大きな違いがある。それは、仲介を務める不動産業者も自ら家を買えるという点だ。これにより、弱肉強食の側面はさらに強くなる。

ライオン
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現実として、物件がいい条件で持ち込まれれば、市場に出す前に自分で買う、もしくは不動産業者仲間に横流しすることができてしまう。たとえば、もとは安い物件にリノベーションを行い、不動産屋の利益が乗った状態にして市場に戻し、結局、掘り出し物とは言えない価格にして物件を売買する、いわゆる「買取再販」が今は盛んだ。

また、今流行しているアパートなどの賃貸物件を扱った不動産投資では、素人がソンをしてプロがトクをするという、セオリーどおりの事例が目立つ。

たとえば、平成24年3月27日に東京地裁で行われた裁判で、不動産投資を勧められて2件の不動産を購入した買主が、売主である宅建業者(不動産屋)から重要事項を告知してもらえなかったとして、売買契約の取消しが認められた事例がある。

この不動産屋は、2000万円が相場である物件1を「3130万円が相場」と嘘を言い、結局2840万円で買わせている。そして1400万円が相場である物件2を「2300万円が相場」と言い、2100万円で買わせた。さらに「家賃収入が30年以上一定」という、非現実的なシミュレーションを提示するなどし、不利益な情報を伝えないことで売買を成立させたとされる。