地味だが実は利便性が高い東横線沿線

そういう街づくりは、えてして世代交代がうまく行われない。

巣立った子どもたちが戻って来ずに、ひたすら衰退の道を歩んでいる多摩ニュータウンとマクロの視点では同じことが、やや時間差をもってこの沿線でも起きるのではないかと思う。

それに比べると、田園都市線のやや南を走る東急東横線は、歴史も長いだけあってしっかりと地元社会が出来上がっている。何よりも渋谷と横浜というパワフルな二つの街を結んでいるので、盤石ばんじゃくの輸送ニーズがある。

沿線には自由が丘や慶應義塾大学のある日吉など、強力な街も存在している。ただ渋谷から都心方面へ通うだけ、という機能を果たしている田園都市線よりも強みが多い。

さらに言えば、この沿線で育った人は地元へ戻りたがる傾向がある。東横線沿線の見かけは田園都市線の街よりも地味だが、世代交代はしっかりと行われている印象が強いのだ。

山手線北側は住宅価格がゆるやかに下がる

山手線内では、北側部分の住宅価格は今よりも相対的に安くなりそうだ。

地名では文京区の大半と豊島区、北区の一部だ。このエリアは元々住宅地であり、文教色の強いところでもある。特に文京区内には、東京大学をはじめとした名門校が数多く集まっている。

そのせいか、文京区はあえて繁華街的な街の発展を好まない行政を行っている印象がある。だから区内にはタワマンが数えるほどしかない。

文京区シビックセンター展望ラウンジからの眺め
写真=iStock.com/NithidPhoto
※写真はイメージです

一方、豊島区には池袋があるので、住宅街的な発展よりも街のにぎわいを重視してきたように思える。エリア内にはタワマンも多い。

それが将来、街の発展や衰退にどう影響するかは、今のところわからない。この山手線北側エリアでも2013年以来の局地バブルの波を受けて、2020年までにマンション価格がかなり上昇してしまった。

コロナ後の不況は、不自然な水準にまで上がっていたマンション価格をなだらかに下降させるだろう。2050年頃には本来の実力価格に戻っているような気がする。

どのあたりが実力値かというと、中古マンションの坪単価が一人当たりGDPの半分あたりであろうか。

現在の貨幣価値なら200万円台の前半である。それくらいであれば、今で言えば年収が1000万円程度の、ちょっと収入の高い人であれば無理なく買える。マンション価格が底を打った2002年頃、このエリアのマンション価格はそのあたりが相場だった。

市場が今のバブルの狂騒を終えて自然な価格形成の流れに戻った時、このあたりの中古マンションの価格は、坪単価にして一人当たりGDPの半分前後の水準で収まっているはずだ。2050年頃にはそうなっている可能性が高いと予想する。