タワマンの建て替えは非常にやっかい

そんな未来を考えると、区分所有のマンションというのは何とも不安定な住形態である。

これは東京だけではなく、日本全体を悩ます問題になりそうだ。そして東京には、さらに厄介やっかいなタワーマンションという、区分所有のモンスターのような建物が何百棟もある。

実のところ、タワマンは普通の板状マンションに比べて、さらに深刻な老朽化問題を抱えそうなのである。2050年頃の東京を考える時、都市を形作っている様々なハードの中で、最も問題が深刻化していそうなのがタワマンではないかと考える。

タワマンも、基本的には普通のマンションと同じく区分所有法が適用される。そこに何も違いはない。だから建て替えの時には、全区分所有者の5分の4が賛成しなければならない。

もちろん、費用の問題も普通のマンションと同じだ。まだ例がないので何とも言えないが、タワマンの場合は建物の取り壊し費用が通常型の2倍程度になるのではないか。

取り壊しただけで、おおよそ1住戸当たり1000万円見当である。これだけでも相当に厄介だ。お気づきだとは思うが、タワマンで「容積率が余っている」という事象はほぼありえない。

それどころか、規制緩和の特例をいくつも重ねて建設されているのがタワマンである。2050年時点でそうした規制緩和がなくなっていた場合、多くのタワマンが既存不適格にさえなってしまう可能性がある。

それがタワマンというものなのだ。つまり、タワマンには未来における「幸運な建て替え」はありえないと言っていい。

タワマンの寿命は45年で尽きる

次に、タワマンにはやたらと維持費がかかる。管理費や修繕積立金は通常タイプのマンションに比べると、だいたい倍だと思っていい。

そして当然ながら、タワマンも大規模修繕が必要である。必要という以上に、プレハブのパネルを張り合わせるようにして外壁が作られているタワマンは、その隙間から雨漏りがしやすいという弱点がある。

だから15年に一度くらいの割合で、必ず外壁の修繕補修工事をすべきだろう。これにはかなりの費用がかかる。それでも、これをやらないと雨漏りだらけのマンションになりかねない。

天井からの水漏れをバケツや皿で受け止めているリビング
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タワマンがやたらと増え出したのは、2000年前後からである。その理由は、1997年に建築基準法の大きな改正があって、タワマンが作りやすくなったことだ。

その頃から猛烈な勢いで東京にタワマンが増え出した。私はかねがね「タワマン45年寿命説」というものを唱えている。前述のように、タワマンは15年程度の年数ごとに、外壁の補修をともなった大規模修繕工事が必要である。

1回目の築15年頃の工事では、せいぜい外壁とその他劣化部分の修繕補修でいいはずだ。2回目の築30年頃の工事では、上下水道の配管を取り替えたほうがいいだろう。縦管はもちろん、各住戸の給湯管も取り替えるべきだ。これにも多額の費用がかかる。

3回目の大規模修繕工事は、スケジュール通りだと築45年あたりになる。2000年頃から竣工ラッシュを迎えた東京のタワマンにとって、その時期は2050年頃になるのではないか。