避妊方法へのアクセスは当然の権利

これまで「アフターピルを入手しやすくしてほしい」という声や要望があまり上がってこなかったのは、アフターピルという薬が世の中に存在することすら知らない人が多いせいかもしれません。日本の性教育は大変遅れていて、正しい避妊方法や、どんな手段があるかといった選択肢を理解している人は、まだ多いとは言えないからです。

あるいは、もしかしたら「こういった薬が必要になるのは、その人の方に落ち度があったからだ」という意識があるからかもしれません。実際、私のクリニックでアフターピルを求める患者さんは、「すみません……」と申し訳なさそうにしている人が多いです。誰にでもあることですし、当然の権利なのですから、謝る必要は全くありません。しかし、昔はもしかすると、説教をする先生がいたのかもしれません。

薬剤師でも情報提供はできる

産婦人科を受診しなければ処方を受けられないという状況は、避妊へのアクセスを制限することになります。必要とする適切なタイミングに、薬が手に入れられない可能性があります。産婦人科には予約が必要なところもありますし、夜は開いていないところも多い。地方だと、近くに産婦人科がないところもあります。それに比べて薬局は近所にあって、夜中まで開いているところも多い。アクセスのしやすさが格段に違います。

「産婦人科で処方すれば、子宮内に設置する避妊具のIUS(子宮内避妊システム)や低用量ピルなど、他の避妊方法について説明できる」「もし服用後に生理が来なかった場合に、来院を促すことができる」という主張もありますが、それは薬剤師でも可能です。アクセスを制限したままでいいという根拠にはなりません。

コンドームの避妊成功率は低い

アフターピルはあくまでも緊急時のための薬なので、継続的で確実な避妊のためには低用量ピルなどを使った方がよいでしょう。アフターピルよりも確実で費用が安いですし、生理痛がある人なら保険の対象になります。服用すると生理痛が軽くなる可能性がありますから。

ちなみに避妊というとコンドームを思い浮かべる人が多いと思いますが、コンドームの避妊成功率はそれほど高くなく、82%に過ぎません。確実な避妊方法とはとても言えません。性感染症を防ぐのが主な役割です。ですから、「男性が、女性の体を思ってつけてあげるもの」というイメージがありますが、これも誤り。男性と女性の双方を性感染症から守るためのものです。