スキーマは自分で探さなければ身につかない
ではこの問題にどのように対処したらよいか。まず、日本語母語話者は英語を使うときに無意識に日本語スキーマを使っていること、しかし、それを使うとほとんどの場合、英語では不自然な文を作ってしまうことを認識する必要がある。次に、英語母語話者のスキーマを自分で探していくことが重要である。
なぜ自分で探していかなければならないのか。日本人が間違えやすいパターンを解説した本はたくさんあるのに、と読者は考えると思う。一つには、これらの本はなぜ日本人がこのような間違いをするのか、その根本にある問題を説明していないので、その根本をどのように修正できるのかについての示唆を得ることができないからである。
さらに、1冊で日本人がよく使う不自然な表現を100指摘してあったとして、それを一生懸命覚えればその100のヘンな表現は直るかもしれないが、ヘンな表現はほかにも無数に存在する。無数に存在する不自然な表現をすべて指摘してくれる本やウェブサイトは存在しないということが第二の理由だ。
しかし、自分でスキーマを探索し、見つけなければならない第三の(そして最大の)理由は、人は正しいスキーマを誰かに教えられただけでは、結局前からあるスキーマに負けてしまい、新しい、正しいスキーマを定着させることができないからである。
英語学習は日本語スキーマとの闘いだ
前にも述べたように、スキーマは、氷山の水面下に隠れていて、無意識にアクセスされ、使われる。英語スキーマをアウトプットに使えるようにすることは、すでに身体の一部になっている日本語スキーマとの闘いでもある。いったん身体が覚えたことをリセットするのはたいへん困難であることは、読者も経験があるのではないかと思う。
日本語スキーマの影響で「似ている」と思っていっしょにしてしまっている単語の意味の違いを理解し、使い分けをするために大事なのは、比較し、意識的に違うところを見つけ出すことだ。しかし、自分の中で「同じ」と思っていると、人が解説してくれても、ふむふむとそのときには思うのだが、もともともっている誤ったスキーマのせいで、大方忘れてしまうのだ。
では、英語としては誤ったスキーマ(日本語に基づいたスキーマ)を修正するにはどうしたらよいか。スキーマの修正は、現在のスキーマを疑うところから始まる。長年染みついて身体の一部となったスキーマを書き換えるには、自分のスキーマが誤っているという事実を突きつけられ、それに納得することがもっとも有効である。仮説をもち、予測をして、それが裏切られたとき、人はもっともよく学ぶのである。
英語スキーマを作っていくには、まず、学習者が表面に現れない英語のパターンを自分で見つけていかなければならない。そして、そのパターンから予測される文を作ってみる。そして、その予測が正しかったかどうか、検証するのである。