教育は「人生の時間をどう使うか」に大きく作用する

【仁禮】結局、その小学校に通い続けるのは厳しいと考え、幼稚園の園長に「小学校をつくってくれませんか」と直談判したところ、有難いことになんと1年でつくってくれたのでそこに通うようになって。当初は1期生6人だけの学校だったので、「どうやったら学びがつくれるの?」「みんなで成長するってどういうこと?」「そもそも学校って何で行くの?」ということをみんなで一緒に考えながら学校をつくっていきました。

中学は、日本の教育をもっと知りたいという思いから、あえて一般の学校に通いました。そこで抱いた違和感や物足りなさを自分の学びとして、最初に起業したのが中学2年のとき。自分で会社を経営し、社会勉強をしながら、新しい教育のあり方を事業を通して社会に提案したいと考えたのです。

以降ずっと、社会に足りていない教育は何か、どういう学びの形をとれば小中高生くらいの子たちにいちばんいい形で作用するのかといったことを常に考え、勉強し、実験しながら、教育の仕組みに関心を持ち続け、主体的に関わっています。教育は、若い時期に長く関わるものなので、良くも悪くも、限られた人生の時間をどう使うかに対して大きく作用してしまいますよね。どうせ影響を与えるなら、より良い影響を与える教育の仕組みをつくれたらいいなと思って、取り組み続けています。

起業家の友人たちと比べて焦りを感じていた時期もある

【ピョートル】ご自身のポリシーとは? そのポリシーに反するものをどう見極めるのでしょう。

【仁禮】現在、2つの会社を経営していますが、共通するポリシーは、人類の生きるプロセスに貢献できるもの、自分が心から共感できるもの、かつ今後の自分に役立つ学びがあるものという観点で仕事をすること、です。TimeLeap社は自分の人生を生きる力を育む教育のコンテンツを、小中高生を中心とした若い世代に提供、ERRORs社では、生きる時間をどうデザインするかに関して教育以外の方法を試しています。

パソコンとスマートフォンを同時に操作する人の手
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

ここに行き着くまで、起業家の友人たちが、スケールを追求する事業で成功したり、数字を伸ばしたり、実績を出したりするのを見て、焦りを感じたこともあるし、その時は「教育はなかなか成果が出ないし、届けるのも難しい。今まで考えてきたものとは全く別の事業をやろうかな」と思って事業のアイデアなどを考え始めたのですが、気づくと「これは本質的に人類のためになるんだっけ?」というところにたどり着いてしまう。

このアイデアは楽しそうではあるし、喜んでくれる人はいそうだけど、人生にどれだけ作用するかというレベルで考えた時に物足りなさを感じてしまって、この先自分がこれに取り組み続けるイメージが全然見えない。わかりやすく言えば、私がピョートルさんにこの新規事業案について話をしても、賛同を得られる自信がない。それは心の底からやりたいと思っているわけではないからです。そういうことは自分がやるべきではない。そう考えています。