大企業の大半は「例年並み」「遜色ない」というが…

こうした新卒採用状況の激変でも、確かに、人気業種の航空、旅行の総崩れをもってして、「就職氷河期」の再来を声高に唱えるのは早計との見方がある。

実際、大企業のほとんどは2022年度の新卒採用に向けて精力的に動いている。この夏場もリモートや対面方式とリモートを組み合わせたハイブリッドなインターンを実施するなど、コロナ禍にあってもこれまでと変わらない水準を維持しながら採用活動に取り組んでいる。

人材サービス大手による調査もこうした大企業の新卒採用活動の動向を裏付ける。

マイナビが9月から10月にかけて実施した調査では2022年度の新卒採用を予定している企業は8割近くに達した。マイナビでは、この水準を「例年並み」と分析する。

リクルートキャリア・就職みらい研究所の9月の調査でも、2022年度採用を予定しているとの回答がほぼ6割に達し、前年度の採用予定と「遜色ない水準」と結論付ける。

しかし、現実は厳しい。「例年並み」「遜色ない」とのんきには構えていられないデータが並ぶ。

就職内定率の下げ幅はリーマン直後に次ぐ冷え込み

文部科学、厚生労働両省による2021年3月卒業予定の大学生の10月1日時点での就職内定率は69.8%で、前年同期を7.0ポイント下回った。「リーマン・ショック」直後の2009年調査(前年比7.4ポイント減)に次ぐ大きな下げ幅で、長期にわたって続いた就職に学生側が有利な「売り手市場」は終焉を迎え、大きな節目を迎えることだけは間違いない。

新型コロナが収束に向かう見通しが立たない中で、航空、旅行に加えて、内需型の産業に雇用の痛みは着実に広がってきている。感染防止のため、移動や会食の自粛が続いている。このため鉄道や外食の疲弊度は半端でない。

E5 系新幹線
写真=iStock.com/MasaoTaira
※写真はイメージです

大量採用を続けてきた東日本旅客鉄道(JR東日本)は2021年3月期連結決算で本業の利益を示す営業利益、最終利益とも民営化後初の赤字に転落する見通しで、新卒採用は抑制せざるを得ない。小売業でも百貨店はコロナ禍でインバウンド需要が消滅した上、対面販売を主体とするため打撃も深刻で、今後、新卒採用に反映されることは十二分に予想される。