コロナショックによって世界経済のデジタル化(DX)は加速している。消費者にとって価格と技術面で満足のいく通信サービスやインフラの整備は、わが国がDXに対応するためにも欠かせない。
個々人がより満足できる環境を目指すべき
以上から確認できることは、経済運営における“修正資本主義”の重要性が高まっていることだ。修正資本主義とは、企業は利潤だけを追求するのではなくゴーイングコンサーン(継続していく前提)として社会的責任を果たしていかなければならず、そのために政府は必要に応じて市場に介入して公平な競争環境を目指すべきとの考え方だ。なお、1947年、経済同友会は修正資本主義の重要性を主張し、企業は株主価値の向上と同時に、従業員および社会への責任を全うすべきとの見解を示した。
通信サービスは、水道や電気同様に国民の日常生活に欠かせない。携帯電話をはじめとする通信インフラの強化は、わが国の安全保障にも関わる。そうした点を踏まえると、本来、携帯電話各社は、国民=利用者が納得できる料金で携帯電話サービスを提供しなければならない。その上で、より大容量かつ高速の、付加価値の高い通信サービスを求めるユーザーには相応の料金水準で通信サービスを提供し、個々人がより満足できる環境を目指すべきだろう。そうした発想は、社会との持続的な関係を目指すために有効といえる。
修正資本主義の考え方は重要性を増している
消費者サイドからの要請によって大企業に変革を求めることは容易ではない。また、企業経営者の宿命として、毎期毎期の業績拡大を実現するために、一定のシェアと利益率を守らなければならないという心理が強くなることも避けられない。供給者と需要者のより良い関係を目指すために、適切と考えられる形で政府が市場に介入するケースは増えるだろう。過度な介入は企業の経営を混乱させる恐れがあるため注意が必要だが、自由放任の発想だけで社会と経済の長期の安定を目指すことは難しい。
コロナショックを境に、世界各国で企業の優勝劣敗が一段と鮮明化している。米GAFAMなど競争力のある企業はさらに大きなシェアを手に入れて寡占が進み、特定の企業が社会に与える影響力は増している。感染第3波によってわが国の経済はかなり厳しい状況を迎えている。政府が限られた財源をより有効に使って経済の再生を目指すために、環境の変化に合ったルールの策定と、適切な形で政府が市場に介入することの意義は高まっている。