渡部さんは「公の場での謝罪」をすでに済ませています。『週刊文春』に不倫をスクープされてまもなく、同誌の「独占90分」というインタビューで反省の気持ちをこと細やかに述べ、謝罪をしています。それなのに半年後に「やっぱり会見も」という流れになってしまうのは、日本で「謝罪会見」がひとつのケジメだと思われているからです。

さらにそこには「悪いことした人がどんな様子になっているのか見てみたい」「悪いことをした人がケチョンケチョンにやられているのを見たい」という人間の心理のいやらしさも見てとれるのでした。

過激な色恋沙汰があっても謝らない……海外セレブと王室の人々

かつてドイツのテニス選手のボリス・ベッカー氏は、その活躍ぶりと同時にプライベートのスキャンダルでもドイツのゴシップメディアを大いににぎわせました。

ボリス・ベッカー氏はかつて既婚者で、2人の子供がいながらレストランで行われたパーティーの物置で別の女性と行為におよんだとして非難を浴びました(後にボリス本人が「物置ではなくトイレの間の階段の踊り場」だと訂正)。その時の関係で相手の女性が妊娠し、後に出産したことで、「彼の子供であるか否か」というバトルが女性とボリスの間で繰り広げられたものの、DNA検査の結果、彼の子供だということが分かっています。

車の中でセクシーなカップル
写真=iStock.com/AS-photo
※写真はイメージです

しかしどの時点でもボリス・ベッカー氏は会見で謝罪していません。DNA鑑定の直前まで「女性と面識があること」や「行為におよんだこと」を否定していました。DNA鑑定で自分が父親だと確定してからは、何事もなかったかのように娘との交流を始めました。どの時点でも「応援してくれている皆さまへの謝罪」は無かったわけですが、そこは日本と文化が違うので単純に比較はできないのかもしれません。

モナコ王室のアルベール大公は現在「3人目の婚外子」にまつわる裁判を起こされています。34歳のブラジル人女性が2005年に産んだ自分の娘の父親がアルベール大公だと主張しDNA検査を求めています。

当事者への謝罪だけでは済まされない日本

「3人目の婚外子」と書きましたが、アルバート大公にはかつてバカンス中のロマンスでアメリカ人のウエートレスとの間にできた現在28歳の娘がいます。また数年にわたり交際はしたものの結婚には至らなかったトーゴ出身の客室乗務員女性との間にできた現在16歳の息子もいます。アルベール大公と女性たちは大いにヨーロッパのゴシップ誌をにぎわせましたが、「皆さんへの謝罪会見」は行われませんでした。

余談ですが、現在日本の皇室の女性と結婚をしようとしている小室さんは何もこの手のことを起こしていないのに、一部で「会見を開くべき」との声が日本で強いことにやはり文化の違いを感じます。

特徴的なのは、日本では「迷惑をかけた当事者に対する謝罪」だけではなく「公の場で『皆さん』に謝罪すること」が求められていることです。そして謝罪を述べるだけではダメで、お辞儀の角度や、反省が伝わるような物腰であることなどが求められ、とにかく追及が厳しいのです。