プロになると実業団時代のような安定した収入は得られない

上を目指すマラソンランナーにとっては夢のような話だが、家族を養う父親としては、非常に悩ましい問題になる。プロになると実業団時代のような安定したサラリーを得ることができないからだ。

福田はNNの話がある前に、プロになる相談を家族にしていた。そのときは、「プロでやるのは不安だ」と妻に強く反対されたという。しかし、「大迫みたいに海外のすごいチームに所属する感じだったらどう?」と聞くと、「それなら話が違う」と“条件付き”のプロ化は黙認されていたかたちだった。

ランナーの足元
写真=iStock.com/FOTOKITA
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NN加入の話が舞い込んだときは、「1年の半分はケニアに住むことなる。世界一のチームなので行ってもいいか? そこで絶対に成長があるはずなんだ」と福田が切り込むと、妻は快く認めてくれたという。

福田は大学卒業後、埼玉に拠点を置く実業団の八千代工業に所属していたが、義理の母が体調を崩したため、退社。夫婦の実家(熊本県玉名市)に近い福岡に拠点を置く西鉄に移籍した経緯があった。

家族思いの福田に感謝している妻は、「今度は自分がやりたいことをとことん突き詰めてやればいいよ」と夫の背中を押したのだ。

世界最強チームの加入で広がる夢、現在、スポンサー企業を募集中

プロに転向しただけでなく、NNに所属できたことで福田の夢は大きく広がった。まず実業団時代のように駅伝の“縛り”がないため、好きなレースに出場できる。

「自分でレースを選択できるようになったことが最大のメリットですね。グローバルスポーツコミュニケーションは世界最大のエージェンシーなので、世界中のレースに出場できるようになると思います。練習もキプチョゲを育てた、パトリック・サングさんの指導を受けられる。そういうところも楽しみな部分です。日本の練習とは流れもパターンも違うと聞いていますから」

コロナ禍のため、まだ実現していないが、今後はレース前の2~3カ月間はケニアの首都ナイロビから約300km離れた標高2400mのカプタガトでマラソン練習を行う予定でいる。

なお、ケニアへの渡航費と現地滞在費はNNが負担する。その他にも金銭的なサポートはあるが、家族の生活費、国内のトレーニング費用(合宿などを含む)を考えると、十分ではないという。

実業団選手とは異なり、プロ転向後は、レースの出場料と賞金、スポンサーとの契約金、イベント出演料が主な収入になっていく。現在、スポンサー企業を募集中だ。