残りの3社はどうなるか

残りの3社も同様のロジックで試算すると、以下のようになります。

高島屋の営業総利益は2857億円で、ここから3割減の値は1999億円。1カ月当たりの売上総利益は166億円になります。

販管費は2601億円ですが、2割減の値は2080億円です。1カ月当たりの販管費は173億円になります。

このため、【売上総利益(166億円)-販管費(173億円)=-7億円】となり、1カ月当たりの営業損失は7億円。中間決算の現金預金は1194億円ですから、枯渇までは170カ月(14年2カ月)です。

J.フロント リテイリングの売上総利益は2069億円で、ここから3割減の値は1448億円。1カ月当たりの売上総利益は120億円になります。

販管費は1615億円ですが、2割減の値は1292億円となり、1カ月当たりの販管費は107億円になります。

このため、【売上総利益(120億円)-販管費(107億円)=13億円】となり、1カ月当たりの営業損益は13億円の黒字です。中間決算の現金預金は1243億円ですが、黒字のため枯渇の心配はありません。

エイチ・ツー・オー リテイリングの売上総利益は2560億円で、ここから3割減の値は1792億円。1カ月当たりの売上総利益は149億円になります。

販管費は2448億円ですが、2割減の値は1958億円となり、1カ月当たりの販管費は163億円になります。

このため、【売上総利益(149億円)-販管費(163億円)=-14億円】となり、1カ月当たりの営業損失は14億円。中間決算の現金預金は274億円ですから、枯渇までは19カ月(1年7カ月)です。

大阪の街並み
写真=iStock.com/TkKurikawa
※写真はイメージです

この試算では、J.フロント リテイリングは黒字となっていますが、さらなる状況悪化に備えられるだけの厚みのある黒字とはいえません。また、高島屋は、耐久性があるようにみえますが、借金を増やすことで手元資金を分厚くしているだけです。いずれも自ら収益を上げることができる構造に変革を起こさなければ根本的な解決とはなりません。

オンライン福袋では起死回生は難しい

百貨店各社は、年末・年始商戦での感染防止のために「オンライン福袋」を打ち出しました。新型コロナの影響で、福袋の内容も例年とは様変わりしており、生活の「応援」をテーマにした福袋が並んでいます。

とはいえ、上述のように百貨店におけるECの割合が低いなかで、オンライン商戦で利益を上げたとしても、百貨店全体を支えることはできないでしょう。ここから先、どれくらいのスピード感を持って、変革を起こすことができるのか。手元資金の試算からも時間はそう長くは残っていません。

百貨店は、変化の対応を先送りにしたことで凋落を招いたと言われていますが、歴史をさかのぼればイノベーターだった時代があるのです。『関西学院経済学研究』47号に掲載の濱名伸氏の論文「近代日本における百貨店の誕生」に百貨店のルーツが記述されています。

江戸時代の呉服屋は見本を持って得意先を回るか、商品を得意先に持ち込む形で売り上げを立てていました。当時の支払はお盆と年末の2回という売掛の方式であったことから、回収リスクや金利分を商品価格に反映されてしまい、消費者に届く値段が高くなっていました。