コロナ禍、EC・ライブコマースで一定の成功も

コロナ禍の売上減を補うため、百貨店各社はオンライン販売(EC)に力を入れています。そのなかには実績を出すものもあります。

たとえば阪神百貨店で毎年ゴールデンウィークと秋に開催している「大ワイン祭」は、例年であれば1回あたり約1億円を超える売上高を誇る名物催事です。コロナの影響で今年のゴールデンウィークはオンラインのみで実施しましたが、1週間で6000万円を売り上げたことで、ECでも手応えをつかんでいるかのようにも思えます。

高島屋は2021年2月期第2四半期の決算説明会資料で、2020年度のネットビジネス売り上げの計画を270億円と発表しています。また2023年度のネットビジネスの売上目標を300億円から500億円に上方修正しています。

しかし、高島屋のコロナ以前の売上高は9190億円であることから、500億円に上方修正されたとしてもECの占める割合は5.4%程度です。抜本的改革なしには立て直しは難しいでしょう。

さらに、エイチ・ツー・オー リテイリングは、2019年5月14日に公表していた中期計画「GP10-2 フェーズ2(2019-2021年度)」を10月30日に取り下げると発表しました。続いて、三越伊勢丹ホールディングスも18年11月7日に公表していた中期計画(2019年度~2021年度)を11月11日に取り下げています。こうした動きからも、百貨店業界が先の見通せない状況にあることがわかります。

百貨店はあと、どれくらいもつのか

百貨店各社はあと、どれくらいもつのでしょうか。コロナ以前(2020年2月期、3月期)の売上総利益、販管費から、これからの1カ月当たりの営業損益を試算ました。試算の前提は「7割経済」。売上総利益はコロナ以前の3割減の7割とします。一方、コストである販管費はそのまま3割減とすることは難しいため2割減の8割とします。これと、最新の中間決算の現金預金を用いることで、あとどのくらいで現金預金が枯渇するかがわかります。

7割経済の試算

三越伊勢丹ホールディングスの売上総利益は3227億円で、ここから3割減の値は2258億円。1カ月当たりの売上総利益は188億円になります。

販管費は3070億円ですが、2割減の値は2456億円です。1カ月当たりの販管費は204億円になります。

このため、【売上総利益(188億円)-販管費(204億円)=-16億円】となり、1カ月当たりの営業損失は16億円です。中間決算の現金預金は459億円ですから、枯渇までは28カ月(2年4カ月)と計算できます。