商品名を変えないソニー、
変えるパナソニックの違い
メーカーのマーケティングの核心に、チャネルが位置することになったわけである。そこから、一つの類型的なマーケティング施策が派生する。
第一に、みずから整序したチャネルをそれとして維持するために、そのメーカーはまず広い製品ラインが必要になる。パナソニックは、AV機器も白物家電も情報機器も扱おうとする。メーカーにとっては、系列販売店が販売できる能力以上に、供給能力があるかどうかが、チャネルを整序できるかどうかのカギになる。トヨタの供給能力は大きく、5つの系列チャネルごとに異なった商品を売り分けることができるくらいになった。系列販売店をはるかに上回る供給能力をもったわけだ。しかし、こうした大きい供給能力をもつのは、大手メーカーであってもたいへん難しい。事実、トヨタのようなビッグ企業でも、同一車を双子車や三つ子車にして、チャネルに向けた供給能力不足をカバーしなければならなかった。
メーカーが複数のチャネルをもつと、それに応じて、自然と商品数そして商品ブランド数は増える。典型は、トヨタであり資生堂だ。両社がチャネル数を増やした理由や経緯は違ってはいるが、両社ともに、複数チャネルを維持するために、ブランド数は膨大な数に上っている。営業担当やマーケティング担当は、たくさんある自社ブランドの違いをきちんと区別して説明できるのか、危ぶまれるくらいに増えている。
第二に、早いサイクルの新製品開発が要請される。系列販売店を維持するための第二の施策は、競合メーカーに遅れることなく、新製品を発売することである。競合メーカーが新しく開発した商品に対抗しうる新製品が、当該メーカーチャネル店になければ、その店は顧客を失ってしまう。そうなるといけないので、その店も、必要と思えば、系列メーカーの競合メーカーから仕入れることを選ぶ。そうすると、(系列メーカーの商品しか売らないという)メーカー専属体制に緩みが出る。そうならないために、系列販売店を確保したメーカーは、先行する必要はなくても競合メーカーに遅れることなく新製品を導入する必要がある。