親孝行の息子「学校の先生に聞くから塾は行かなくていいよ」

「私が病院で医療事務をしているからか、医療の世界は身近に感じていたようで、幼少期は“将来は医療系に進みたい”と言っていました。高校で成績が上がったので、医学部も夢ではないと思ったのでしょう」

『プレジデントFamily医学部進学大百科2021完全保存版』
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実はGくんは幼い頃、アトピーと喘息を患い、喘息では入院の経験もある。幸い、成長とともに症状は良くなり、中学ではバスケットボール、高校ではバドミントンと、運動系の部活で体力も付いたことで、今ではすっかり症状が治まったそうだ。

「幼少期は喘息の発作を抑えるための吸入器と吸入薬をどこに行くにも手放せませんでした。病気で辛かった時期があったので、息子にはとにかく健康に育ってくれたらと願うだけでした。医師になってほしいなんて一度も思ったことはありません。大学進学も、本人が強く希望すれば行かせてやりたいと思っていました。しかし、家庭の事情で家から通える地元の国公立大しか学費が払えないということは、息子に常々伝えていました」

Gくんはそんな母の懐事情を察してか、一度も自分から「塾に行きたい」と言ったことはなかったそうだ。

「医学部を目指すことになり、むしろ私から『苦手な科目だけでも塾に行ったほうがいいんじゃない?』と勧めたこともあったのですが、『わからないところは学校の先生か、塾に通っている友達に聞くから大丈夫』と言っていました。親に余計な負担をかけたくないと思っていたのではないでしょうか」

最終的に月額4000円のそろばん教室に小3から高2まで通ったほかには、塾や家庭教師、通信教材にも一切頼らず、Gくんは高校の勉強だけで受験勉強を進めた。

小論文は学校の先生に“無料”で添削・指導してもらう

Gくんは参考書にも頼らず、教科書と問題集、学校で配られるプリントをひたすら解いていたという。

過去問も自分では購入せず、先輩が使った赤本を譲り受けて使った。医学部入試で必要になる小論文対策は、学校の先生に頼んで課題を出してもらい、添削・指導を受けていたそうだ。

「私が息子にしたことは、毎日のお弁当づくりと、車で通勤するついでに学校まで送ったくらい。高校の授業料も無料でしたし、お小遣いは必要なときに本や文房具、コンビニで友達とおやつを買うお金を渡す程度でした」

そろばん以外で大学入学までにかかった出費といえば、高1で学校主催の1泊2日の勉強合宿に参加したときの費用が数千円と、月々1万円ほど積み立てた沖縄への修学旅行代の十数万円程度だったそうだ。