創価学会員の背中を押した“なっちゃん”の演説

毎日新聞の出口調査によると、無党派層で「分からない・無回答」と回答したのが19.8%だったのに対し、公明支持層の「分からない・無回答」という回答が27.8%と、約3分の1が態度を決めかねていた。公明党が賛成の立場を取っているにもかかわらず、「分からない・無回答」と答えた割合が無党派層より10ポイント近く多いのだ。

建前としては自主投票だが、現場の活動においては賛成という、“中ぶらりん”の状態では創価学会員が困惑してしても不思議ではない。そんな状況のなかで、さきほどの山口代表の演説動画がさらなる混乱を広げてしまった。

創価学会員が賛成と反対のどちらに投票すればいいか悩んでいるなかで、山口代表の演説動画は賛成への“公認”を与えることになった。しかし、都構想反対の創価学会員にとってこの演説動画は、自主投票であるにもかかわらず公明党から自らの考え方を真っ向から否定されたと感じるものだったという。

建前では自主投票、実際には賛成という中途半端な状況が、支持者の決まっている選挙しか経験したことのない創価学会員を混乱させてしまった。このしこりは今後も残りそうだ。

「対応がブレブレ」で離れる友人票

以前から熱心に公明党を応援していた創価学会員の男性は、いままで100人以上の友人に公明党への投票依頼を行い、その友人のほとんどが自律的にまた別の友人に公明党への投票依頼をしているという。

このような、非信者であるにもかかわらず自主的に投票依頼をしてくれる友人のことを、大阪の創価学会では「○外さん(まるがいさん)」と呼ぶ。

自民党とともに大阪維新の会と対決した2019年の大阪市長選挙、大阪府知事選挙が行われた際にも、それらの○外さんに声をかけて公明党への支援を呼びかけていた。しかし、今回の住民投票ではほとんどの○外さんに「去年は維新とやりあっていたのに対応がブレブレで信用できない。今後は公明党の応援はしない」と言われてしまったという。

公明党は大阪維新の会への態度を二転三転させているが、このような公明党の対応に信者たちは振り回され、肝心の票田を失っている可能性が高い。今回の住民投票で賛否が真っ二つに割れたことを考えると、創価学会員は賛成派、反対派の双方から「対応がブレブレだ」と非難される可能性がある。

創価学会員は今後、投票依頼する際にさきほどの男性のような経験をすることも少なくないだろう。