スイス・ライヘンバッハの滝で直接対決

ロンドンの犯罪界を仕切っていれば、犯罪を明るみに出して犯人を捕まえてしまうホームズの存在が邪魔になるのは当然。かくして「最後の事件」にて衝突することになり、挙句の果てにはスイスのライヘンバッハの滝で直接対決することになるのだった。

ホームズとモリアーティ教授の最終対決の舞台となった、スイス・ライヘンバッハの滝
写真=iStock.com/mmeee
ホームズとモリアーティ教授の最終対決の舞台となった、スイス・ライヘンバッハの滝

その後発表された長編『恐怖の谷』にも登場するが、これは時系列的には「最後の事件」よりも前に設定されている。そのため、「最後の事件」でワトスンがモリアーティ教授の噂を聞いたことがあるかとホームズに問われて「ない」と答えていることと矛盾してしまった(これについてはシャーロッキアンの研究の課題となっている)。

恐怖の谷』のバールストン館事件では、表立って姿こそ見せないが、裏ではモリアーティ教授が糸を引いていたのである。

このジェイムズ・モリアーティ教授は、ホームズにとって難敵である巨悪だが、伏線もなく「最後の事件」でいきなり登場する。これは作者コナン・ドイルが、シャーロック・ホームズを書き続けるのを止めるために、ホームズに匹敵し得る悪を必要としたがゆえである。このモリアーティとの対決の末、ホームズのシリーズは(一旦)終了するのだ。