海外市場での「内需主導型成長」に参加するべき

周知のように、日本では、2005年から人口減少が始まった。国立社会保障・人口問題研究所の06年12月時点での推計によれば、05年に1億2777万人であった日本の総人口は、50年には9515万人、2100年には4771万人にまで減少するという(出生中位・死亡中位のケース)。

一方、国際連合の06年の調査によれば、05年に65億1475万人であった世界の総人口は、50年には91億9129万人にまで増加するという。

人口減少による市場規模の縮小が予想される日本とは対照的に、海外では新興国を中心にして、人口増加にともなう市場規模の拡大が進む。世界同時不況からの脱却をめざす日本企業が進むべき道は、新興国の成長市場に密着し、グローバルに展開することである。「成長市場への密着」とは、日本企業が、世界の中でも成長力が大きい市場に入りこみ、そこに密着して、自社の製品やサービスを販売する道である。ここで強調すべき点は、新興国の最大の魅力は、しばしば指摘される豊富で低廉な労働力にあるのではなく、じつはその市場の将来性にあることである。世界各地の新興国の都市にみなぎる活気は、日本の「三丁目の夕日」の世界を彷彿とさせる。「三丁目の夕日」のあとに日本人が経験したのは、世界史的なインパクトを持つ高度経済成長であった。

新興国の人々は、高度経済成長の疾風怒濤のなかにすでに身を置きつつあるか、そうでなければまもなく身を置くかである。その際には、日本の高度経済成長を牽引したのが、輸出の伸びではなく国内市場の急拡大(個人消費支出の伸長と設備投資の増加)であった事実を、想起する必要がある。日本企業にとっての活路は、海外市場での「内需主導型成長」に積極的に参加することにあると言うことができる。

日本企業が活路を切り開くためには、新興国に存在するビジネスチャンスを正確に見抜き、旺盛な企業家精神を発揮して、新興国の経済発展に貢献することが求められる。このような行動のお手本になるのが、黎明期イリスの日本での事業活動にほかならない。150年前、幕末開港時の日本にやってきたドイツ人商人たちが抱いていた心意気は、今日の日本企業関係者にとっても、きわめて重要な意味を持つのである。

(平良 徹=図版作成)