破産でも再建でもない「第三の方法」

最終的に私は、この中の特別清算を選択します。この方法を選ぶまでほぼ毎日、弁護士の先生とメールなどでやりとりしながら、9000万円の借金をどう返していくかばかりを考えていました。経営者仲間からは「少し良いマンションを買ったくらいだな!」なんて言われましたが、当時はうまく受け流せるほどの心の余裕はありませんでした。

そして、弁護士の先生とやりとりする中で、「経営者保証に関するガイドライン」の存在を知ります。詳しくは、専用ページを参照いただきたいのですが、簡単に言うと、一定の条件を満たしていれば、信用情報に一切記録されることなく、経営者の債務免除を行うという施策です。

もちろん、これまでに私を信用して融資をしてくれた銀行などには、形はどうであれ、その信頼を裏切ることになります。それに関しては本当に心苦しく、経営者として「借りた金は自力で返すべき!」とも思っているので、感情的にはだいぶ厳しいものがありました。

しかし、いずれにせよ、このままずるずるいっては、もっとひどい結末になる。であれば、このガイドラインに沿って会社を清算し、再起に向けて動き出すべきだと判断しました。そのうえで、この経験を多くの人に伝える役目があると思いました。

倒産を必要以上に恐れることはない

倒産を経験した私が今、同じような境遇にいる方に一番伝えたいこと、それは「倒産を必要以上に恐れることはない」ということです。これには多くの反発が予想されますが、目の前の事実にしっかり向き合って出した答えが「倒産」であれば、そうする他ありません。一つひとつ誠実に対応していけば、倒産後の人生がどん底にはなりません。

もちろん、私は倒産を推奨しているわけではありません。倒産すれば全てが解決するわけでもない。倒産後に人生がどん底になることはないにしても、それなりの苦労もあるでしょう。

『全店舗閉店して会社を清算することにしました。』
『全店舗閉店して会社を清算することにしました。』

しかし、大切なものを守ることを最優先に考えたときに、倒産は1つの選択肢となり得るし、それで大切なものが守られるのであれば、そうするべきです。そして、その経験を糧に生きていくことができます。

私はそう決意して、新会社を立ち上げ、新たなスタートを切りました。これが成功するか、そして「倒産」の選択が本当に正しかったのか、その答えが出るのはまだ先で、これからの私の生き方にかかっています。

きっと、いま、つらい思いをしている方がたくさんいると思います。そんな人が私を見て、「あんなやつでも倒産して明るく生きているのか。だったら自分にもできそうだ」と思っていただけたら幸いです。

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