炎上後、あるユーザーは以下のように投稿している。

まぁこのツイを企業公式アカウントでRTしてる時点でお察しなんじゃない…

また、11月2日はもともと、「#タイツの日」のハッシュタグとともにタイツを履いた女性のイラストが多数投稿される日だ。その中には性的なニュアンスのイラストも多い。担当者はツイッター上での情報拡散を狙って、こうしたインターネット上の文脈を踏まえて企画したのかもしれない。

ツイッターユーザーの中には、「絵自体は可愛いが、企業がこれを勧めていることが理解できない」「オタクが内輪で盛り上がるには良いが、公式アカウントのツイートだとしたら意図が分からない」といった反応も多い。今回は、担当者の個人的な趣味や価値観、もしくはインターネット文脈に寄せ過ぎたキャンペーンを企業公式として行った末に、企業としての見識を問われ炎上したと推測できる。

意見がもつれる会議
写真=iStock.com/MR-MENG
※写真はイメージです

タカラトミーもアツギの場合も、投稿の動機は純粋に自社商品のPRだったはずだ。にもかかわらず、タカラトミーの場合は幼い子どもを持つ保護者、アツギの場合は幅広い年齢層の女性など、自社商品を買ってくれる当の顧客をないがしろにする投稿で深くブランドを傷つけてしまった。

女性担当者であってもジェンダー問題が起きる背景とは

今回の炎上には一つの特徴がある。「女性の性的消費」「男性目線の投稿」といった批判が多く挙がったが、アツギの公式ツイッター担当者および参加したイラストレーターの多くは女性だったのだ。

女性が対象となるジェンダー問題で炎上した場合などには、「女性視点が欠けている」「女性担当者が不在」と指摘されることが多かった。過去には、オムツメーカーの日系企業の動画がジェンダー問題で炎上した際、好対照な動画で評価を得ていた外資系企業と日系企業の“役員の女性比率”の違いが話題となったこともあった。多様性に満ちた動画を上げていた外資系企業のほうが、圧倒的に役員の女性比率が高かったのだ。

では、実際にこうした過去の炎上事例では、女性担当者が不在だったのだろうか?

実は必ずしもそうではない。筆者自身が見聞きする範囲でも、ジェンダー問題で炎上した広告施策で女性担当者が含まれていたものはいくつもあった。また、常識的に考えても多くの人と予算が関わる広告施策に、女性が一人もいないことは考えにくい。

それでも炎上した理由として考えられるのは、

1)組織の中で序列が低いなど女性担当者の意見が通りにくかった。または、女性がごく少数派で意見が言いにくかった
2)女性担当者が男性社会や男性向け市場に馴染む中で男性社員と視点が似通ってしまった
3)女性と言ってもいろいろな考え方の人がいるため、純粋に問題があると感じなかった

などである。

1)2)の場合には、ツイッターを含む広告施策の運用に限らず、多様性の観点から企業として組織のあり方そのものを見直す必要があるだろう。この問題は別途議論を深めるべきだ。しかし、今回の事例は3)の要因が大きいと推測される。

アツギの炎上問題の主要原因を推察すると以下の通りだ。

・ツイッター担当者(部門)のリテラシー不足
・社内の確認体制の甘さ
・リツイート数などの数字を追いすぎた可能性

今回は、明らかにツイッター担当者や企業自体に「タイツを性的な目で見られることで起こる問題、性犯罪の助長」などに対する見識不足があった。また、個人アカウントでの発信ならOKでも、社会的に影響力のある大企業がオフィシャルに伝える内容として適切かどうか、多様な立場の人が見た時にどう感じるか、について考えが至らなかったと思われる。