避難所で高齢者が誤嚥性肺炎を起こしやすいのも口の中が汚いから

誤嚥性肺炎は食物や唾液などを気管から肺に誤って吸い込んでしまい発症する。睡眠中に唾液の誤嚥で起こることが多く、唾液に含まれる細菌やウイルスなどが肺に入って炎症を起こす。

口腔ケアが不十分で口の中が汚れていると、肺炎を何度も繰り返すことになり、この肺炎で亡くなるのはほとんどが高齢者だ。

災害時の避難所で高齢者が誤嚥性肺炎を起こしやすいのもよく知られている。被災地では歯みがきが十分できないこともあり口の中の状態が悪化するからだ。

誤嚥性肺炎を減らす手段として効果的なのが口腔ケアだ。専門的な口腔ケアで誤嚥性肺炎やインフルエンザの罹患が激減する例が数多く報告されている。

正しいブラッシングや舌磨きでインフルエンザ発症率が10分の1に

中でも有名なのが、21年前の1999年に「ランセット」誌に発表された米山武義・米山歯科クリニック院長と東北大学医学部の佐々木秀忠教授(当時)らの研究だ。

全国11カ所の高齢者施設で2年間にわたり行われたもので、口腔ケアが高齢者の誤嚥性肺炎を減らす効果があることを実証した。この場合の口腔ケアは歯科衛生士による専門的な口腔ケアのことだ。専用の器具などを使って口の中を徹底的にきれいにする。

このプロの口腔ケアを行うと高齢者の誤嚥性肺炎が40%減少し、さらに発症しても軽症ですみ、死亡者数も減少。認知症の進行まで抑えられたという。

他にも国内で同様の臨床研究がたくさんあり、たとえば、正しいブラッシングや舌磨きを行うと、インフルエンザ発症率が10分の1に減った例や、歯科衛生士が週1回、口腔ケアや歯のクリーニングを実施したところ、インフルエンザの発症率が87%も減少し、風邪の発症率も24%減少した例などが挙げられる。