ネットを検索すれば大概のことはわかる。しかし、「わかった!」と納得できる情報に行き着くことはまれだ。『実践 自分で調べる技術』を書いた宮内泰介氏と上田昌文氏は「世の中の情報の99.9%は、まだ書かれていない。だから知りたい情報を得るためには、現場に出かけ、見て、話を聞くという『フィールドワーク』が必要になる」という――。
※本稿は、宮内泰介、上田昌文『実践 自分で調べる技術』(岩波新書)の一部を再編集したものです。
「知りたい情報」はどこにあるのか
何かについて知りたいと思ったとき、まずは、誰かがそれについて調べていないだろうか、書いていないだろうか、と考えます。
それを調べるのが、前の章で解説した文献・資料調査です。記事・論文、本、新聞記事、そして統計と形こそ違え、いずれも誰かが大事だと思って調べ、根拠を示しながら書いているものですから、たいへん有益なものです。さらには、筋立てて書いてくれていますので、物事の因果関係もよくわかります。
しかし、言ってしまえば、文献や資料に載っていることは、この世の現実の一部にすぎません。誰かが調べてくれている、と言っても、それはあくまでその人の視点で調べたものです。書かれている因果関係は、その人の視点と方法による分析です。それが自分が調べたいことと、ずばり一致するということは、なかなかありません。
知りたい情報は、なかなか書かれていないのです。
私たちは、一人ひとりが無数の知られざる「情報」をもっています。私が朝何を食べたか、私はどういう友人関係をもっているか、私は今の政治についてどう考えているか、私は地域社会のなかでどんな役割を果たしているか、私の職場ではどんな隠れたルールがあるか。
どうでもよさそうな情報から大事な情報まで、私たち一人ひとりは、数え切れないほどの情報をもっています。