現在の日本でいちばん多い世帯は、夫婦と子どもからなる家族ではなく、単身で暮らす「おひとり様」。特にここ数年は、65歳以上の単身世帯が増えているのだそう。社会学者の筒井淳也先生が「中でも深刻なのは高齢男性の単身者問題」と語る理由とは──。
ベッドに座ったまま外を見ている男性
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生活力がなさすぎる

日本では2010年以降、65歳以上の高齢者の単身世帯が大きく増加しています。内訳を見ると、今のところは高齢女性のおひとり様が多いのですが、10~20年後には男性も増えてくるでしょう。妻に先立たれた人だけでなく、近年増加中の生涯未婚の男性も加わってくるためです。

今、65歳以上で一人暮らしの男性は、妻に先立たれた人がほとんどです。この世代は家事を妻に任せっきりにしてきた人が多く、自分で自分の身の回りのことができないという傾向があります。

日常生活を送る上で自立できていないわけですが、本人たちがそれに気づくのは妻がいなくなった後。多くの男性は、妻のほうが後に亡くなると思い込んでいるので、一人暮らしになった時に備えて家事力をつけておこうとは考えません。

料理も洗濯も掃除もままならない状態で、ある日突然一人暮らしになる。そうなれば、生活に深刻な問題が起きるだろうことは想像に難くありません。高齢者のおひとり様で大切なのは、第一に「自分で自分の身の回りのことができる」ことだと言えるでしょう。

また、身の回りのことができても、孤立した状態では安心して暮らせません。その意味で、第二に大切なのは「周囲との関係を維持できる」ことです。