サイズは豊富にそろえ、柄や色はシンプルに徹する

——商品のセレクトも厳選されているということですが、そのことで取り扱う商品の幅を狭めてしまうことにはなりませんか?

【坂本】たとえばオムツやミルク、お子さんの冬物のアウターといった、「品種」はできるだけ増やしていきたいですし、それはお客さまに対して多くの商品を提供するという考え方になると思います。

ただ、品種の中に似たような商品をたくさん増やしていく、ということは避けようと思っています。たとえばアウターなら、デザインがあまりに豊富にあると選ぶのに迷ってしまいますよね。サイズの展開はしっかりとしますが、柄や色、形といった部分はできるだけシンプルにそろえていこうと考えています。

少し話が逸れますが、私は電機メーカーから西松屋に転職して驚いたことがあります。というのもそれまでいた日本の電機業界というのは、付加価値をたくさんつけることで製品の単価を高くし、そこで利益を生み出していったわけですが、西松屋は正反対の考え方を持っていたんです。

西松屋は、オリジナル商品の開発時にも付加価値は極力なくす。もし必要なのであれば最低限の機能に絞り、その分、お客さまに商品を低価格で還元していくことに価値を見いだしている。そんな姿勢が、店舗運営においても貫かれていると言えるかもしれません。

アパレルとは違う存在だと思っている

——失礼ながら、西松屋さんはH&MやZARA、GAPといった子ども服を扱うアパレルブランドのようなおしゃれ感はないイメージです。それもまた戦略でしょうか。

【坂本】店内にマネキンを置いたりするようなトレンド感ある、いわゆる一般のアパレルとは店のつくりもまったく違いますし、そこを追求しても仕方ないと僕は思っています。

やはり西松屋は社会インフラとして、必需品を扱う、なくてはならないお店である、ということを訴えていきたい。コロナによる自粛期間中に営業を継続したのも、やはり社会インフラとしての当社の役目を果たすためでした。

廊下は広く、カートとベビーカーを並べても余裕がある。
廊下は広く、カートとベビーカーを並べても余裕がある。(画像提供=西松屋チェーン)

赤ちゃんのミルクやオムツは毎日必要なものです。これが近所で手に入らないとなったらますますお母さんはストレスがたまるでしょうし、不安にもなる。衛生用品も、大人用のものを赤ちゃんには使い回せなかったりします。ですから、コロナのような非常に厳しい状況にあっても、そういった生活必需品をご提供し続けることが必要だと考えました。

これも想像ですが、自粛期間中にお子さんをどこへも連れて行けず、遊び場が限られていた中、西松屋に行くと広い通路があり、子どもがのびのびとしている。それにおもちゃもお菓子も置いてあり、お母さん自身のストレスも買い物で発散できる。

最も厳しい状況にあった4、5月は、そんなふうに楽しんでいただける店にもなっていたのではないかと思います。