旧カネボウの経営者がコーチングを受けていたら……

私の体験から見てみると、クライアントが次の4点ができるようになるとECは必ず成功する。

(1)積極的な心構え
ECをネガティブにとらえない。コーチングを受けることは経営幹部として見込みがある証しである。

(2)コーチとの相互信頼
コーチが信頼されなければ、クライアントは本音を言わないので潜在能力を引き出せない。

(3)謙虚さ
すべての責任は自分にこそあるという言い訳しない謙虚さが必要である。リーダーには自我の強い人も多い。社員、部下、経営環境などのせいにしている限り変革はできない。

(4)しつこさ
ポジティブで挑戦的な姿勢が必要である。物事から逃げず、徹底的にしつこく成功するまでやり続ける心構えが求められる。

費用対効果を算出するのはむずかしいが、ECを行うと業績は確実に向上する。クライアントの視野が広まり、視点が定まることで目標達成への意欲が高まり、より一層高い自己実現を目指すようになる。

そうしたリーダーに率いられる組織は目標達成へのエネルギーが高まり、組織が活性化し、部下が主体的に考え、行動するようになるといった成果が報告されている。

苦労する点の1つは、クライアントをどれほど強くコミットさせられるかである。頭で理解しても、実行して成果をあげなければ全く意味がない。ECの効果が顕著に出るか否かは、ここのところにかかっている。

私は、1965年、アメリカ留学から帰国し、カネボウに入社した。当時のカネボウは「愛と正義の人道主義」を標榜する素晴らしい会社で、キラキラと輝いていた。活私奉公を信条に25年間営業に邁進した。自分を鍛え直す意味で、ハーバードビジネススクールのAMP(高等経営者講座)に挑戦し、「経営はトップの品格による」ことを学び、人間力を磨く教育を叩き込まれた。