社内の変人を子会社社長に抜擢して修行させる

プロノバ社長の岡島悦子氏
プロノバ社長の岡島悦子氏

【島村】今、若手が中心となって、「ゴングショー」みたいな取り組みをやっています。研究開発の人間に、10%は自分の好きなことをやっていいと言って、さまざまな部門のトップの前で自身のアイデアを発表してもらうイベントです。遊び心も取り入れつつ、若手がみずから声を出していける環境をつくっていきました。というのも、海外進出の際、日本の優秀な人材を送ったもののことごとく失敗して、日本的な優秀さの基準とは違う世界だと実感したんです。このような取り組みを通して、状況変化に対応していける力を持った人材を発掘していきたいとも考えています。

【岡島】私も次の社長を育成するために、まず人を選抜して、その人を教育して、子会社の社長にしていくといった取り組みをしています。社内の反感を買わないよう、まずは子会社という、離れ小島の村長的なポジションになってもらい、修行させるというわけです。抜擢される人材は、異能や異分子を持った人たちが多い。そういう人たちって360度評価するとあんまり周囲からの評価は高くなくて、変わっている人ってポジションなんですけどね。

リーダーの役割は「よいファシリテーター」になれるか

経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏
経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏

【冨山】今までの日本企業は“野球の幅”で戦ってきて。でも、野球がサッカーになる時代。だから、野球選手しかいない会社だと弱いし、脆い。あるとき急にサッカーどころか、団体戦から個人戦のテニスになっちゃうことだってありえますから。変異に対してどう対応できるか、今、経営層が問われている。それに、マネジメントに求められるものも変わってきていますよね。たとえばかつての旭硝子(現・AGC)の工場長というポジションと、今のマネジメントプロフェッショナルでは違う。

【島村】当時は、部門のトップは誰よりもその部門のことを知っている人、経験を持っていてスキルがある人がトップになっていました。でも今はボーダレスの時代です。リーダーの役割はよいファシリテーターになれるかどうかということだと思います。得意じゃないことは得意な人の知恵を借りればよい。求められるパーソナリティが昔と明らかに変わってきていますね。

【冨山】結局は、メッシやロナウドをマネジメントできればいいわけだから。Jリーグチェアマンの村井満さんは、サッカーの名選手でもなく、元リクルートの方ですから。昔だったらダメですよ、名選手でないと束ねられない。でも今はそれができる。