日本人のスキー離れが止まらない。現在のスキー・スノーボード人口はピーク時の約3割まで落ち込んでいる。しかも今年は新型コロナウイルスの影響で、インバウンドも期待できない。日本のスキー場はどうなってしまうのか。金融アナリストの高橋克英氏が解説する——。

国内スキー人口の減少と降雪不足

レジャー白書によると、日本国内のスキー・スノーボード人口は580万人(2016年)と最盛期だった1800万人(1998年)の約3割にまで減少している。レジャーの多様化とデフレ下で実質所得が低迷したことが背景にある。また、過疎化や少子高齢化の進展もあり、スキー場周辺の宿泊施設や飲食店の廃業なども続いており、スキー場の利用者減少につながっている。さらに追い打ちをかけるのが、雪不足だ。温暖化により降雪不足が続き、営業日数が確保できないスキー場も増えている。

国内スキー人口の減少や降雪不足により、スキー場利用収入が減少、リフトやゴンドラの更新やスマホ対応など設備投資ができず、スキー場の魅力が低下し、さらなる利用者の減少を招く、という負のスパイラルに陥っているのだ。

たとえば長野市の公的セクターが運営する飯綱高原スキー場は、長野冬季五輪の会場にもなった由緒あるスキー場だったが、国内スキー人口の減少などにより採算が悪化し、今年2月に営業を終了し閉鎖された。また、新潟県の糸魚川シーサイドバレーでは、降雪不足により、1980年の開業以来、初めて冬季の営業を断念している。日本経済新聞の報道によると、新潟県内では昨年(2019~2020年シーズン)、57あるスキー場のうち10施設が営業日ゼロという異例の状況だったという。

最盛期には、600前後あった日本国内のスキー場は、バブル崩壊による倒産などで大きく減少し、現在は500前後にまで減っている。もっとも、スキー人口が最盛期の約3割に対して、スキー場は最盛期の約8割も残っていることになり、数少ない顧客を多くのスキー場で奪い合う状況に陥っている。

スキー場を救ってきたインバウンド

こうした長期低迷の状況に歯止めをかけてきたのが、インバウンド(訪日外国人)だ。

2000年代以降、北海道のニセコでの豪州スキーヤーの増加を皮切りに、円安によるインバウンド増加もあり、スキーを楽しむ訪日外国人も増え、国内スキー人口の減少を補ってきた。

さらに、観光庁によると、スキー・スノーボードを行った訪日外国人1人当たり旅行支出は22万5000円と、訪日外国人1人当たりの旅行支出である15万3000円を上回っていることも、スキー場には恩恵となり、設備投資や新規投資が進み、ますます魅力が増して、スキーヤーも増えるという好循環も生まれていた。

日本のスキー場は、パウダースノーに代表される雪質は無論、温泉や食事の魅力であり、2022年の北京冬季五輪も控え、アジアを中心としたインバウンドの受け入れ体制を整えることで、わが国のスキー場はさらなる発展の過程にあった。

しかし、コロナショックによって、インバウンドは今年4月以降、ほぼゼロの状態が続いている。ビジネス渡航などは、往来が緩和されてきているものの、欧米では感染者数が収まっておらず、2020~2021年シーズンのスキー場に訪日外国人が戻る可能性は低い。