この数年は、技術だけではなく、手塚治虫や石ノ森章太郎といった古典作品を学ぶ「マンガ史」などの講義にも力をいれ、実作と理論の両輪でプロ作家の育成を目指す。麻生さんの意志も固い。
「友人は2年生の秋にもうデビューしています。私も何としてでも漫画家になりたい。今は出版社へ定期的に作品を持ち込んでいます。プロになれるならば、どんなテーマでも描く覚悟です」
ただし、全員がプロの漫画家になれるわけでもない。
現役の漫画家で、実作指導も行っている小川聡講師は学生の意識について次のように話す。
「学生の志望を見ていると、『霞を食ってでも漫画家になりたい』というのは3割程度です。一方、マンガはあくまで趣味で一般企業への就職を考えているのが3割。残りはその中間というところです」
ある3年生は、「マンガか就職か迷っている」と正直に話してくれた。
「同級生のなかにはマンガへの情熱がとても強い子もいる。こっちは課題をこなすだけでも精一杯なのに、それ以外に同人誌活動をしたり、持ち込み原稿を別に書いたり。ちょっとおされています」
芸術系やクリエーター関連の学部学科では、「我こそは一番」という学生が集まる。学内のレベルの高さに気後れして、情熱を失う学生は一定数いる。マンガ学部出身者にはどんな就職先があるのだろうか。小川講師はいう。
「ゲーム関連では絵のスキルが役立ちます。また、一般企業の企画職としても評価されているようです」
※すべて雑誌掲載当時
(永井 浩、浮田輝雄=撮影)