1965年、福井県福井市に設置された私立大学。設置者は学校法人金井学園。50年に設立された北陸電気学校を前身とする。在学生は1689人(2010年5月1日現在)。学部は工学部のみ。学科は機械工学科など9つ。偏差値は46。附属福井中学校・高等学校があり、スポーツも盛ん。
理系にも知られざる名門がある。05年に開設された福井工業大学(福井県福井市)の原子力技術応用工学科は、1、2期生の24人と2011年春卒業の3期生10人の全員が原子力関連企業への就職を決めた。福井県には全国最多となる15基の原子力発電所があり、「原発銀座」とも呼ばれている。原発に関わる技術者を地元で育てることは悲願でもあった。
同学科の大きな特徴は定員20人に対して教員10人という超・少人数教育だ。実習は1年生のときからあり、2年生からは週2回180分ずつの実験をこなす。さらに学外に見学や実習に出る機会も多い。田中光雄教授はいう。
「原子力関連企業の実務技術者やOBを招いて『寺子屋形式』の授業を開いています。また、ほぼ全員が関西電力や日本原子力研究開発機構などでインターンシップを経験することになります」
4年生の赤松岳明さんは大阪府出身。専門性の高さが入学の理由だという。
「資源に乏しい日本で原子力発電は必要不可欠の技術。原発を専門的に学べる唯一の大学と聞いて選びました」
赤松さんは1年生のときに第2種放射線取扱主任者に合格。2年生のときには第1種を取得した。第1種の合格には「東大や京大の大学院生クラスの知識が必要」(田中教授)という。すでに日本原子力研究開発機構への就職が決まっている。
一方、原子力発電には放射能汚染や事故隠蔽といったネガティブなイメージもある。現在、国内大学のもつ研究炉は東京大、京都大、近畿大の3つ。だが、いずれの大学も学科名から「原子力」の3文字は消された。福井工大も「設立初年度から2009年までは定員割れだった」(砂川武義准教授)。だが、CO2削減の気運の高まりで、再評価の流れがある。
「2010年は定員20人に対して25人が入学。オープンキャンパスでも関心の高まりを実感しています」(砂川准教授)
受験の際に、偏差値という物差しで大学を選ぶ受験生や親は少なくない。確かに偏差値は有効な物差しにはなる。
だが、大学の実力を完全に表すものではない。むしろ立地や伝統などが過大に評価され、実勢が偏差値に反映していない大学が実に多い。競争倍率にも同じことがいえる。福井工大のように定員割れでも有望な学部学科はいくらでもある。
偏差値は偏差値、就職は就職。大学の現場を取材する1人として、それはあくまでも別問題なのだと強調したい。
※すべて雑誌掲載当時