中国は「輸出拠点」から「供給拠点」に変わっていく
そうやって、デジタル化、スマート化に流れも取り込みながら、結局は人が残り、日々、カイゼンを進め、組織能力を高めているものづくり現場を国内に確保する。そして、いざという災害時には早期復旧も代替生産もでき、感染防御力も高く、その経験知を中国やASEAN等の海外拠点にも教えることができるという存在になっていくでしょう。
日本企業の海外拠点は、日本拠点ほどではないものの、中国企業などに比べれば、もう少し面倒な擦り合わせ型製品のものづくりに力を入れ、特にASEAN等の海外工場はその有力な輸出拠点として育てていく。一方、賃金が高騰している中国は輸出拠点というよりも中国現地市場への供給拠点としての比重が増すでしょう。
こうして、平時には日本国内、中国、ASEAN等の工場がそれぞれの特長を生かして、製品や企業の特性により、グローバル補完型あるいはローカル完結型のサプライチェーンを築き、全体で国際競争力を高めるという考え方が望ましいと思います。
伸縮自在な「グローバル・ローカル・サプライチェーン」へ
そして緊急時には「戦うマザー工場」である国内の工場が、中国やASEANの拠点を遠隔通信も含め支援し、被災拠点は速やかに復旧し、必要に応じて互いに代替生産し、グローバル展開サプライチェーンをローカル完結サプライチェーンに、あるいはその逆に、迅速に切り替える「サプライチェーン柔軟性」を持つことが重要です。
要するに、平時がグローバルなら緊急時にはローカルに、平時がローカルなら緊急時はグローバルにと、自在に陣形を変えられる、伸縮自在な「グローバル・ローカル・サプライチェーン」が、アフターコロナ時代のグローバル経営の一つの形でしょう。
そのためには日本国内の工場だけでなく、中国やASEANの工場でも日頃から組織能力を高める努力をしなければならないのは言うまでもありません。その中心に、日本の「戦うマザー工場」が存在しうるわけです。