イベント会社が「簡易PCR検査場」のアイデアをひらめいたワケ
当社のお客さまでイベントに遊具などの資材を供給する会社の社長は、コロナで予定されていた仕事の多くがキャンセルになりました。すると、すぐに中国からマスクの輸入を始めたのです。
市場にまったくマスクが出回っていなかった時期のことです。とにかくお客さまのために何かしたいと、ほとんど利益を取らずに販売しはじめたのです。これまでマスクとは何の関係もなかった会社なのですが、イベント資材の調達の関係で中国とのパイプがあったので、いちはやく動いた。
この会社の強みは、自社のつながりを活かして、臨機応変に、すばやくアイデアを実行に移せるところです。お金もうけのためではなく、日ごろお世話になっているところに何か提供できないか、という発想から、実際にマスクの輸入まで行いました。自粛などが落ち着いたころに、関係先が再びどこの会社と取引したいと思うかは、明らかです。
しかもこの会社はその後、さらに面白いことを考えました。イベント会場には、よく空気で膨らませる遊具がありますが、その会社はそういう遊具の提供がメインの仕事です。そこで、空気で膨らませて設営する巨大なエアーテントを開発し、それをPCR検査場として活用することを考えたのです。屋外の広いスペースがあるところに設営することで、密になりにくい。設置・移動が簡単なうえ、要らないときはたたんでおけばいいので収納場所もとりません。
普段から中国の企業と共同でいろいろ開発していたところから思いついたそうですが、私はその話を聞いたとき、「やっぱりこの社長はすごいな」と思いました。
「いま世の中が求めているのは何なのか」「どうすれば、自分たちの強みを活かして社会に貢献できるか」ということへの感度がとても高い。世の中のニーズを見極めて、必要なものを形にしていく力があるのです。普段からそういうことをよく考えているし、考えたことを実行している。思考力と実行力の両輪が、うまく回り続けているのです。
ドラッカーが言っているように、注視しないといけないのは「市場」と「強み」です。市場は世の中です。自分たちの持っている強みで、どうすればお客さまを喜ばせられるか。「世の中のほうから」という視点を持てるかどうかです。
自分で知恵が出なければ、社員みんなで考えればいいのです。できない理由より「やる方法」を考えて、迅速果敢に動く。これができれば、「逆境に強い会社」がつくれます。
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