パワハラになる叱り方とならない叱り方はどこが違うのか。『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)を出した弁護士の井口博氏は「ハラスメント研修でたびたび聞かれるため、部下に言ってよい言葉と悪い言葉のべからず集を作った。パワハラになりうる基準がある。その一部をご紹介しよう」という――。

※本稿は、井口博『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

口論
写真=iStock.com/XiXinXing
※写真はイメージです

コロナ渦中に施行されたパワハラ防止法

今年は新型コロナ関連の話題でニュース番組や新聞が占められてしまい、結果としてあまり大きく取り上げられなかったが、2020年6月、パワハラ防止法が施行された(正式には労働施策総合推進法の改正法という)。

拙著『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)は、この法律の内容についてかなり細かいところまで解説を試みた1冊である。組織で働く人にとっては、年齢や立場にかかわらず、ハラスメントについての知識は必須教養になっていると思う。

ただ、これまで弁護士として1000件以上のハラスメント相談を受けてきた経験をもとにいえば、法律を理解することと同様に、職場でのコミュニケーション法を学ぶ必要があると感じている。

そのためハラスメント研修の際にも、法律の解説とは別に、部下、後輩との接し方、話し方についてお話するようにしている。そういうときには「これは言ってはいけないというような、パワハラべからず集のようなものはありませんか」という質問が必ず出るのだ。

そんなこともあって、私は部下に言ってよい言葉と悪い言葉のべからず集を作った。その一部をご紹介しよう。