その時は、その知人女性がたまたまそういう感想をもったのかな、と思いました。しかし、別の女性と話をした時も「女の敵は女」という言葉が出てきました。そこでようやく、これは日本でよく使われる「言いまわし」なのだと気付きました。
意識してみたところ、確かに日本では「女の敵は女」だと思わされるシチュエーションはちょくちょくあるのでした。
私が日本に来てすぐに横山ノック元大阪府知事による女子大生スタッフへの強制わいせつの件がメディアで話題になりました。筆者もこの女子大生スタッフに大いに同情したのですが、ある女性はこう言いました。
「女子大生はお金のためにマスコミに話を売ったのだと思う」
「横山ノックは女子大生にはめられたのだと思う」
この発言を聞いた時に「女の敵は女なんだな」と思ったことを覚えています。
ジャーナリストの伊藤詩織さんの例を見ても分かるように、あれから20年以上経った今も、性被害に遭った女性に「目立ちたいだけ。男性はむしろ女性にはめられた」と言う人は後を絶ちません。
子供のいる女性の「しわ寄せ」が独身の女性に…
会社で働く女性から「子供を持つ女性社員からのしわ寄せがつらい」という声をよく聞きます。新聞社の悩み相談サイトの「働く」の項目には、定期的にこの手の相談内容がアップされています。
内容は「子供のいる女性の同僚がよく学校の行事や子供の病気などで仕事を休むため、独身の私は有休が全くとれなくなった」「子供のいる女性の同僚が時短で働くようになってから、その分の仕事が独身で子供のいない私に降りかかっている。残業で疲れ果てているのに事態が改善される兆しがない」といったもので、文章から疲労度が伝わってきます。
地方都市で中学校の教員をしていた50代女性は「自分も子供がほしかったけれど、働いていた中学校の女性の教員たちには既に子供がいて、当時独身だった私に仕事がふられることが多かった。デートもままならず結局子供を持つことはかなわなかった」と話しました。
育児と仕事を両立しなければ女性も大変ですが、その横にいる「独身の女性社員」にも大きな負担が強いられている現状があるのでした。
責任は会社にあるはずだ
確かに、仕事仲間の女性が子供をもった結果、自分に多くの残業や休日出勤がふりかかってくることを想像すると、その理不尽さに怒りが沸々と湧いてきます。
この話は一見すると、なにかと「子供をもつ女性社員」を責めがちです。しかし本質的な責任は「会社」にあります。誰かが抜けた時に社員に偏ることなく仕事を振り分けたり、新たな人員を雇ったりして調整する責任は会社にあるからです。