ヨーロッパでも女性の分断が問題に

また家事の外注が進むヨーロッパでは、高等教育を受けたミドルクラスの女性が家事や掃除などの仕事に就く移民のマイノリティ女性を差別する傾向が見られます。

この現象については、ポストフェミニズム論の代表的論者であるアンジェラ・マクロビー氏がイギリスを例に、本来は「女の仕事」であった家事や掃除などの仕事に従事する移民の女性がミドルクラスの白人女性から「自分たちよりも劣った存在」として憐みの対象で見られ、連帯の対象として見なされていない問題を指摘(Angela McRobbie, 2009, The Aftermath of Feminism, SAGE)しています。

イギリスが階級社会だという背景もありますが、決してそれだけが理由ではなく、明らかに「女性が女性を低く見て、女性が女性にきつく当たる」傾向もあり、ヨーロッパの「女性の連帯」が必ずしも全ての場面でうまくいっているわけではないということがうかがえます。

「女性同士のバトル」を見るのが好きなニッポンの社会

日本で特徴的なのは「女性同士のバトル」をどこかエンターテインメントとして消費しているところです。週刊誌で「女が嫌いな女」がランキング形式で発表されることがあるのも日本ならではです。

ところで冒頭の杉田水脈氏の「女性はいくらでも嘘をつけますから」という発言について、筆者は当初「女性の一般的な発言に関する杉田氏の感想」と勘違いをしていましたが、実際には性暴力がらみでされた発言でした。

ストレスフルな主婦の日常の一コマ
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです

杉田氏は自民党の会議で2021年度の予算の概算要求の説明を受けた際に「性暴力を支援する相談事業を民間団体に任せることは反対だ」という自らの意見を話すなかで「女性はいくらでも嘘をつけますから」と発言しました。

「女性がレイプ被害等について、いくらでも嘘をつける」というのは、日本に限らず世界の多くの国でひろく信じられてきた偏見です。しかしWHOは性暴力被害者のための法医学的ケアガイドラインの中で「女性は(性被害について)嘘をつく」というのは「典型的なレイプ神話」(誤解)だとしています。

杉田氏の性暴力の被害女性を咎める発言は今回が初めてではありません。2018年にはジャーナリストの伊藤詩織さんについて「女としても落ち度がありますよね」「伊藤詩織さんが記者会見を行って嘘の主張をした」と発言しました。SNSには「介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むようなことをする女性」と書き、伊藤さんに訴えを起こされています。

性暴力を受けた女性に「本人に落ち度があったのでは」と発言すること自体がセカンドレイプにあたります。衆院議員がこのような発言をする背景には、日本の社会にも同様に考える一定の層がいるからだという見方もできます。