両国のリーダーがヒートアップ
ナゴルノ・カラバフをめぐっては、1990年代に「ナゴルノ・カラバフ共和国」をアルメニア人が独立を宣言して以来、幾度なく戦闘が繰り返されている。この地域に住んでいたアゼルバイジャン系住民の集落はことごとく襲撃に遭ってきた。
ナゴルノ・カラバフ自治州のエリアでは、こうした戦闘や襲撃を通じて、アゼルバイジャン系住民が3万人死亡、さらに100万人もの人々がアゼルバイジャンの残りの80%の地域に難民化して居住させられる憂き目に遭っている。元外交官で日本・アゼルバイジャン友好協会のカランタル・カリル会長は、同自治州のこうした状況について「今やアゼルバイジャン人は誰もあそこには住んでいない」と強調している。
こうした中、アゼルバイジャンとアルメニア双方は9月27日の戦闘開始以来、明らかにヒートアップしている。
「ナゴルノ・カラバフにいるのはアルメニア人の占領軍だ」と主張するアゼルバイジャン側では、首都バクーで9月27日、近年最大規模のデモが発生。ナゴルノ・カラバフの奪回を訴えた。
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領はこの日、「私たちの反撃により、不正な30年にわたる占拠は終わる」と述べ、再びナゴルノ・カラバフを掌握することへの自信を示した(BBC日本語版、9月28日)
一方、アルメニアのニコル・パシニャン首相は、アゼルバイジャンによる「計画的な侵攻」があったとし、「神聖な祖国を守る用意をせよ」と呼びかけた、という。両国はいずれも9月27日中に戒厳令を出したとも伝えられている。
「キリスト教vsイスラム教の対立」との見方もあるが
今回のナゴルノ・カラバフを取り巻く戦闘が始まって以来、現地の情報が希薄な中だが、それでも日本語でも報道を見かけるようになった。
一部メディアは、「背景にはキリスト教が多数派のアルメニアと、主にイスラム教徒のアゼルバイジャンという宗教上の問題がある(ロイター通信)」と語っているものがある。
確かにアルメニアがキリスト教の正教徒、かたやアゼルバイジャンはテュルク系でイスラム教徒(ムスリム)と、双方の多数派が信仰する宗教は違うのだが、この問題については「北方領土問題と同様に、純然たる領土問題であって、宗教上の争いではない(友好協会のカランタル会長)」と述べている。
そうした中、双方の友好国の動きが不穏となってきた。両国ともに、旧ソ連を構成していた15共和国の一員だったことから、ロシアは双方に即時停戦を呼びかけた。