ミサイルが次々に住宅街へ

中近東とロシアに挟まれたコーカサスにある2つの国、アゼルバイジャンとアルメニアとの間で9月27日、軍事衝突が発生。双方に民間人を含む220人以上の死者が出ている。開戦から10日余り経ち、都市部への攻撃も始まっており、死者の増加も懸念されている。

ナゴルノ・カラバフ地域の主要都市ステパナケルトで砲撃を受けた後、破壊された家屋の前に立つ警察官
写真=AFP/時事通信フォト
ナゴルノ・カラバフ地域の主要都市ステパナケルトで砲撃を受けた後、破壊された家屋の前に立つ警察官

ソ連崩壊以来すでに30年を経たが、いまだに旧ソ連の構成国が領土問題で戦いを交える中、各国からの停戦に向けた提案が矢継ぎ早に出されながらも、双方の軍隊はいずれも全く撤退する構えをみせていない。

現在戦闘が行われている場所は、アゼルバイジャン南西部の「ナゴルノ・カラバフ」と呼ばれる地域だ。国際連合をはじめ、各国はこの地をアゼルバイジャンの領土と認めているが、現状では西側の隣国・アルメニアが事実上支配している。

今回の戦闘の火蓋が切って落とされたのは9月27日。BBC(日本語版)はアルメニア防衛省筋の発表として「ナゴルノ・カラバフの主要都市ステパナケルトを含む、民間人居住地域で27日朝、攻撃が始まった」としている。

米ロを巻き込む戦争に発展する可能性も

目下、戦闘はエスカレートする一方だ。アルメニアからと思われるミサイルが、アゼルバイジャンの複数の市街地に着弾。住宅などに被害が出たと10月5日までに伝えられている。一方、アルメニア側もステパナケルト市内に爆弾が落ち、大きなクレーターができたという写真を配信。双方の応酬がネット上をにぎわせている。

両国の紛争をめぐっては、これまでに欧州連合(EU)と米国のほか、ロシアやフランスなどが停戦を呼び掛けているが、全く改善の色は見えてこない。双方が市街地への攻撃を非難し合う中、北大西洋条約機構(NATO)も停戦を促しているが効果は乏しい。

日本にとってはなじみが薄いかもしれないが、この領土問題はアメリカとロシアという2強国を巻き込む戦争に発展する可能性をはらんでいる。ロシアがアルメニアを後方支援する一方、トルコの要請でNATO軍が介入するような事態にまでエスカレートすれば、「旧ソ連2カ国の小競り合い」というレベルにはとどまらなくなるからだ。