これこそ診療所のトップ、つまり開業医に有利な仕組みになっているのです。もちろん、へき地医療などを担う立派な開業医も多く、それらの方々には頭の下がる思いですが、全体的には開業医が有利な仕組みになっていることは事実です。
診療所との連携がうまく取れない病院の経営がどんどん苦しくなりますから、最終的には儲からない診療科を切り捨てなければならない。経営環境が厳しいので、病院勤務医の労働条件はますます厳しくなる一方です。最新鋭の高価な医療機器もなかなか揃えられない。そういった病院に救急患者が運び込まれても、「うちでは設備もないし、人もいないから診られません」と断らざるを得ないでしょう。「患者のたらし回し」という憤懣やるかたない事件が起きるのも病院だけ、診療所にとっては縁のない話なのです。
こうした状況をみて、厚生労働省も重い腰を上げて、診療所に有利な現行の保険点数制度を是正しようとしています。
裏を返せば、それだけ病院が破綻寸前の過酷な状況に置かれているということです。たとえば一般病院の医業収益率は2007には0.5%と過去最低を記録しました。また、全国の自治体病院の8割は赤字です。そんな環境で働く病院勤務医の待遇が上がるわけがない。それどころか、難しい医療を任せられ、勤務はますます過酷になっています。
勤務医の年収は開業医の6割弱しかありません。開業医は数千万円を手にする一方で、勤務医はサラリーマン並の給料なのです。しかも過労で自分が倒れてしまうほどの激務であり、訴訟リスクも抱えています。勤務医は、どうみても割に合わない仕事です。