理由2 退職金に加算がされても得しない

「来月から大幅に給料がカット、ボーナスも多分出ないだろうし何よりもこのまま行くと倒産して退職金は出ないだろう」、さらに続けて上司は囁きかける。「だけどね、今辞めたら退職金は加算されるし、再就職支援サービスも受けられて万々歳だよ」

サラリーマンの収入は一時的な損得で判断しないほうがよい。幸いすぐ再就職ができても、中高年者は特に給料が大幅減になるのが当たり前。なぜなら勤続10年、20年の年功部分を喪失するのだから。給料が下がれば、公的年金受給時に報酬比例部分も少なくなる。

退職金の加算金額や再就職先での給与額にもよるが、生涯給与で比較するとリストラ退職は圧倒的に損な選択になることが多いと言える。私自身、57歳でリストラ・自営化の道を選択したが、その際将来的にみると金銭面ではマイナスになると覚悟はしていた。しかし、残留を選択した同期と比較してこれほど大損になるとは思わなかった。

退職金で住宅ローンや教育ローンを返済でき、再就職先の安い給料でも女房と二人食っていければいいという人もいるだろう。退職後の生活設計ができるから辞めてもいいという判断だ。しかし中高年にとって、マイホームと子どもの教育資金をクリアしても、親の介護や自分たちの老後の資金問題がある。当面ではなく将来設計をしたうえでの判断がのぞまれる。

リストラをすることによって会社は大きな利益を生み出し再建を果たそうとする。社員も同じように利益を得られるかというとそうではない。社員が損をすることによって、会社が得をすることを忘れてはならない。両方得をすることは労働経済学上ありえないのだ。

財布のお札
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理由3 リストラ退職は一生引きずる

再就職支援会社でカウンセラーをしていてわかるのは、どんな人も退職後数カ月は「リストラされた」ことを引きずることだ。

愛着もあり会社のために頑張ってきたと思っているのに情け容赦なく「戦力になっていない、働く場所はない」と「辞めろコール」を浴びせかけられたのだから、そのショックたるや計り知れない。裏切られた、生きていく気力が失せた、と心に大きな傷を受ける。さらに自分自身の自信と誇りを失い、プライドもずたずたにされている。再就職活動をはじめるどころではないのだ。こういうケースで、家族が本人の気持ちを推し量って対応してくれればいいのだがそうでないことも多い。

「夫がリストラされたなんて、親戚や近所に恥ずかしい」と食ってかかる奥さんも珍しくない。「いつになったら就職が決まるの」と毎日就職活動で疲れて帰ってくるたびに家族から罵声を浴びせられる。精神的に追い込まれ、帰宅恐怖症になる人もよくみかける。

仮に運良く就職が決まっても、このときの心の傷がトラウマとなり、家族との間にできた溝が修復されず人生の敗残者のようになってしまう人も出てくる。再就職支援会社のロビーやブースの異様な静けさは、リストラされた人の精神状態そのものと思わずにはいられないのだ。